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肥満

 戸塚康男

概論

 肥満とは、中性脂肪が脂肪組織に過剰蓄積した状態と定義される。身長から算出される標準体重の120%以上であれば病的肥満と診断してよいが、肥満の程度を体重だけでは評価できないことも少なくない。脂肪細胞の数が増加するhyperplastic typeよりも、一つ一つの脂肪細胞が大きくなるhypertrophic typeのほうが代謝異常をきたしやすいと考えられる。また身体の部位により、脂肪組織の代謝に差異のあることも認められている。肥満のメカニズムにはまだ不明な点も多いが、一部には身体徴候としての肥満を手掛かりに原疾患の診断に結びつくものもある。

病歴からのアクセス

 @先天性異常の有無。
 A体重歴:小児期からの肥満か?(hyperplastic type)。
 B誘因:食事歴、運動歴。
 C素因:家族歴。
 D随伴症状:糖尿病症状(多尿、多飲、体重減少)の有無。筋力低下。寒がり、高度の便秘。性機能障害。

主要症候からのアクセス

 @脂肪の分布:全身ほぼ一様に脂肪が蓄積しているのか、それとも体幹部への蓄積が著明で四肢は比較的細く、満月様顔貌やbuffalo humpを伴うのか(中心性肥満)。
 A皮膚所見:グルココルチコイド過剰状態では皮膚は薄く、赤色皮膚線条(単純性肥満でみられる皮膚線条は白色)や顔面紅潮を認める。
 B二次性徴の欠如:視床下部性肥満では性腺機能不全を伴うことが多く、腋毛、恥毛の欠如や外性器の発育不全がみられる。

臨床検査からのアクセス

 @尿一般検査:尿糖
 A血算:白血球(数、分画、好酸球数)。
 B血液生化学:血糖、Na、K、Cl、UN、クレアチニン尿酸、Ca、P、アルブミン総蛋白、コレステロール、中性脂肪CPK、GOT、GPTLDHAALP。
 C内分泌検査:遊離コルチゾール(尿)、T4、T3、T3U、TSHコルチゾール(デキサメサゾン抑制試験)、インスリン、C-ペプチド、テストステロン、エストロジェン。
 DヘモグロビンA1C。
 E骨X線。
 F腹部エコー。

診断の確定へ

 @クッシング症候群:a.中心性肥満、満月様顔貌、buffalo hump、顔面紅潮、赤色皮膚線条を認め、近位筋の筋力低下がある。b.糖尿病高血圧症、骨粗鬆症を合併する。c.白血球増多、好酸球減少。d.尿中遊離コルチゾールが増加する。デキサメサゾン抑制試験で病型も含めた確定診断が行われる。
 A甲状腺機能低下症:a.体重の増加は、脂肪よりも体液貯留によるものが大きい。b.原発性の場合には甲状腺ホルモン低下に加えて、TSHの上昇が認められる。
 Bインスリノーマ:a.肥満はあまり著明でないことが多い。b.絶食試験で低血糖とインスリン(c-ペプチド)の高値を証明する。
 C多嚢胞卵巣(Stein-Leventhal症候群):無月経、不妊、多毛症。
 D偽性副甲状腺機能低下症iPTH不応症):Ca、P代謝異常や骨の異常。
 E頭部外傷や脳腫瘍による視床下部性肥満:病歴、CTスキャン。
 F肥満に加えて、低ゴナドトロピン性性腺機能不全や知能障害などを伴うまれな先天性疾患として、Prader-Biedl症候群(筋緊張低下)、Laurence-Moon-Biedl症候群(多指症、色素性網膜炎)、Froehlich症候群(尿崩症、視力障害)等があげられ、視床下部の機能異常が肥満の発生に関与すると考えられている。

 特定の原因疾患が認められなければ、単純性肥満と考えられる。いずれの原因による肥満でも、糖尿病高血圧症、痛風高脂血症、心疾患、脂肪肝、胆石症などの合併の有無が臨床上有用である。

鑑別すべき疾患

 @単純性肥満
 Aインスリン非依存型糖尿病を合併した肥満
 Bクッシング症候群
 C甲状腺機能低下症
 Dインスリノーマ。
 E多嚢胞卵巣。
 F偽性副甲状腺機能低下症
 G視床下部性肥満:腫瘍(頭蓋咽頭腫など)、頭部外傷、Prader-Willi症候群、Laurence-Moon-Biedl症候群、Froehlich症候群。

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