概論
先天性心疾患の新生児における発現頻度は0.8%とされているが、その内訳は年齢層により大きく異なる。内科領域でみられる代表的先天性心疾患は、心房中隔欠損、心室中隔欠損、動脈管開存、肺動脈狭窄、ファロー四徴、Eisenmenger症候群の六つである。(表1)
表1 疾患の概念
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心房中隔欠損 │一次孔欠損、二次孔欠損、静脈洞欠損、肝静脈洞欠損の四種類がある。
心室中隔欠損 │その部位により、膜様部(周囲)欠損(全体の8割)、筋性中隔欠損、
│流入路欠損、および流出路欠損の4種類に分類される。
動脈管開存 │左肺動脈の根部と、左鎖骨下動脈を発した直後の大動脈とつなぐ動脈管
│が開存した状態。
肺動脈狭窄 │弁狭窄とも漏斗部狭窄がある。
ファロ―四徴 │四徴とは、心室中隔欠損(膜様部)、肺動脈狭窄(通常は漏斗部狭窄、
│ときに弁狭窄を伴う)、大動脈の右方偏位とそれによる心室中隔への
│騎乗、および右室肥大の四つを指す。
Eisenmenger │心室中隔欠損、動脈管開存、心室中隔欠損等において肺高血圧と中心性
チ症候群 │アノーゼを呈する症候群。
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臨床症状
@チアノーゼ:皮膚・粘膜が暗紫赤色を呈している状態のことで、その部位の還元ヘモグロビン濃度が5g/dl以上のときに出現する。チアノーゼが認められるのは、右−左短絡か重症の心不全がある場合であるが、普通、後者では100%酸素の吸入により著明な改善がみられるので、前者との鑑別が可能である。表2に右−左短絡によるチアノーゼ呈する代表的疾患をあげるが、4歳以上のチアノーゼは、ほとんどがファロー四徴かEisenmenger症候群と考えてよい。動脈管開存例で肺血管抵抗が体血管抵抗を凌駕すると、短絡が右‐左へと逆転するため、チアノーゼは手指にみられず、足趾にのみ認められ、differential cyanosisと呼ばれる(左手指、特に母指にも軽いチアノーゼをみることがある)。チアノーゼ状態の合併症には、多血症、痛風、奇異性塞栓、脳障害(塞栓、血栓、出血、膿瘍による)などがある。
A心不全:呼吸困難、動悸、易疲労性、心拡大。ファロー四徴では、成人に達した例でも、心不全や心拡大はまれである。
B発育不良:小柄、かつ華奢な体格を示す例がある。
C繰り返す呼吸器感染、感染性心内膜炎。
D心音異常と心雑音(表3):しばしば発見のきっかけとなる。
表2 チアノーゼを呈する先天性心疾患(″5T and 2AT″)
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ファロー四徴 │Tetralogy of Fallot
大血管転位 │Transposition of the Great Arteries
三尖弁閉鎖 │Tricuspid Atresia
総肺動脈還流異常│Total Anomalous Pulmonary Venous Return
総動脈管 │Truncus Arteriosus
大動脈弁閉鎖 │Aortic Atreisia
肺動脈弁閉鎖 │Pulmonary Atresia
Eisenmenger │
症候群 │
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表3 聴診所見
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心房中隔欠損 │ @肺動脈領域の駆出性収縮期雑音
│ AU音の固定制分裂
│ B胸骨左縁下方での三尖弁性拡張中期雑音
心室中隔欠損 | 胸骨左縁での粗くて大きな汎収縮期雑音(しばしば振戦を伴う)
動脈管開存 | 胸骨左縁第2肋間または左鎖骨下における連続性雑音
肺動脈狭窄 │ 肺動脈領域の駆出性収縮期雑音
ファロー四徴 │ @大きく単一なU音
│ A肺動脈領域の駆出性収縮雑音(基本的に肺動脈狭窄雑音であるが、 │単独肺動脈狭窄症の雑音とは逆の態度をとる。すなわち、軽症ファロー │四徴では、重症肺動脈狭窄に似て心雑音は強大で持続も長く、重症ファ │ロー四徴になるほど雑音は減弱、持続も短くなる。)
Eisenmenger │ @音肺動脈成分の亢進
症候群 │ A肺動脈駆出音
│ BGraham Steell(肺動脈弁逆流)雑音
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一般検査所見
心電図(表4)、胸部X線像(表5)
表4 心電図所見
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心房中隔欠損 │ @V1(およびV2)のrSr’
│ A成人では心房細動や心房粗動などみることあり
│ P‐R間隔延長
心室中隔欠損 │ 正常(軽症)、左室肥大、または両室肥大
動脈管開存 │ 正常(軽症)または左室肥大像
肺動脈狭窄 │ 正常(軽症)または右室肥大像
ファロー四徴 │ 右室肥大
Eisenmenger │ 右室肥大または両室肥大
症候群 │
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表5 胸部X線像
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心房中隔欠損 │ @肺動脈(左第二弓)とその分岐の拡張
│ A右室と右房の拡張
│ B肺野の血管陰影が増強し、末梢まで血管陰影
│ を追うことが可
心室中隔欠損 │ @肺動脈とその分岐の拡張
│ A肺血管陰影の増強
│ B左室の拡大
│ C小欠損では異常なし
動脈管開存 │ @肺動脈とその分岐の拡張
│ A肺血管陰影の増強
│ B左室の拡大
│ C軽症では異常なし
肺動脈狭窄 │ @肺動脈の狭窄後拡張
│ A肺血管陰影の減少
│ B右室の拡大
ファロー四徴 │ @木靴心(肥大した右室による左室圧排の結果)
│ A肺血管陰影の減少
│ B左第二弓の陥凹
│ C心拡大はまれ
│ Dときに右側大動脈弓
Eisenmenger │ @肺動脈と右室の拡大
症候群 │ A肺血管陰影の減少
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特殊検査所見
心音図(表3)、心エコー図・ドップラー検査(表6)、心カテーテル検査(表7)。
表6 心エコー図・ドップラー所見
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心房中隔欠損 |@右室容量負荷所見(右心系の拡大、左室の変形、および心室中隔の奇
| 異性運動)。
|A断層心エコー図による欠損口の描出。
|Bカラー・ドップラー法あるいはパルス・ドップラー法による短絡血流
| の検出。
|Cパルス・ドップラー法により、肺動脈の血流量と大動脈の血流量を測
| 定し、肺体血流量比を推定。
心室中隔欠損 |@左室と左房の拡大。
|A右室拡大は欠損がある程度大きくないとみられない。
|B断層心エコー図での欠損の描出。
|Cカラー・ドップラー法による短絡血流の確認。
動脈管開存 |@左室と左房の拡大。
|A動脈管の描出。
|Bドップラー法による短絡血流の検出(主肺動脈内の乱流信号)。
肺動脈狭窄 |@右室の肥大と拡大。
|A肺動脈弁の doming motion。
|B肺動脈の狭窄後拡張。
|C連続波ドップラー法による狭窄部圧較差および右室圧の推定。
ファロー四徴 |@心エコー図による四徴の描出。
|Aカラーないしパルス・ドップラー法による心室中隔欠損右−左短絡血
| 流の検出。
|Bドップラー法による肺動脈狭窄部の圧較差と右室圧の推定。
Eisenmenger |@心エコー図による基礎疾患の診断。
症候群 |A拡大した右室と肺動脈の描出。
|B連続波ドップラー法による右室収縮期圧の推定。
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表7 心カテーテル検査所見
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心房中隔欠損 | @カテーテルの走行(右房から左房へ)
| A酸素含量の右房でのステップアップ
| B肺体血流量比の算出
心室中隔欠損 | @右室での血液酸素含量のステップアップ
| A左室造影(右室、肺動脈の描出)
| B肺体血流量比の算出
動脈管開存 | @カテーテルの走行(肺動脈から大動脈へ)
| A酸素含量の左肺動脈でのステップアップ
| B肺体血流量比の算出
肺動脈狭窄 | @右室−肺動脈圧較差
| A右室造影による狭窄部位の判定
ファロー四徴 | @カテーテルの走行(右室から左室、大動脈へ)
| A動脈血酸素飽和度の低下
| B両心室圧が等しい
| C右室−肺動脈圧較差
| D右室造影(肺動脈と大動脈が同時に造影される)によ
| 肺動脈狭窄部位の判定
Eisenmenger | @基礎疾患の診断
症候群 | A肺動脈圧と肺血管抵抗の異常高値
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診断
各疾患の診断そのものは、理学所見および非観血的検査法で可能である。したがって現在では診断に心カテーテル法を必要とすることはあまりない。
管理上必要な検査
いずれの疾患も基本的に手術療法を行うが、きわめて軽症の場合は経過観察し、肺血管抵抗がきわめて高い場合には対症的に処置する。なお、小児期の軽症心室中隔欠損は自然閉鎖を期待して経過観察を行う。経過観察中には診察と心エコー図・ドップラー検査を繰り返し、各心腔径、心機能、肺動脈圧(ドップラー法)、感染性心内膜炎合併の有無等に注意を払う。
メディカル・ノート
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血流速度と圧較差の関係
狭窄病変の前後で圧較差(ΔP mmHg)と狭窄後のjetの流速(V m/Sec)とは、以下の関係にある。
ΔP = 4 * (V^2)
すなわち、連続波ドップラー法により流速を測定すれば、非観血的に圧の情報が得られるわけである。この式を利用して、三尖弁逆流jetの速度から右室収縮期圧を推定することも可能である。
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