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肺化膿症

 宮地純樹

概論

 肺実質感染の一部が壊死に陥った化膿性炎症で、結核菌によるものを除く。壊死胸部X線上空洞の出現によってそれと知れる。単なる肺炎に留まるか肺化膿症となるかは起炎菌の種類によって規定される因子が大きい。肺化膿症を起こしやすい菌は各種嫌菌性菌、黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌、大腸菌、緑膿菌などである。肺炎球菌・インフルエンザ桿菌などは肺化膿症を起こしにくいとされる。嫌気性菌によるものは誤嚥で口腔内常在菌を吸引して発症する例が多い。敗血症肺塞栓に伴うものは多発性で、きわめて急速に空洞化する。古くは肺壊疽(悪臭ある喀痰を生ずるもので、嫌気性菌が主)と肺膿瘍に分けられたが、現在は肺化膿症と総称している。

臨床症状

 @病歴:誤嚥(泥酔・歯科処置・神経疾患)に続発することがある。
 A全身症状:発熱・全身倦怠・食思不振・やせ等がある。敗血症肺塞栓に伴う例では全身症状は特に重篤である。悪寒を伴う高熱と著しい全身衰弱をきたす例が多いが、「かぜ」として抗生剤を投与されていた例などでは微熱程度で全身状態がきわめてよいものもある。
 B局所症状:咳・膿痰・胸痛(随伴性胸膜炎・膿胸による)などがある。悪臭ある喀痰をみたときは嫌気性菌が疑われる。血痰・喀血もときどきみられる。

一般検査所見(表1)

  表1 肺化膿症検査所見
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 胸部X線│ @区域性ないし肺葉性の広がりをもつ浸潤影の中に空洞(単発・多発)
     │ A空洞内にしばしば鏡面像。               
−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 血液検査│ @白血球ことに好中球増多と核左右移動、ACRP陽性、B赤沈亢進。
−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 起炎菌 │ 喀痰・気管吸引・病巣穿刺液などのグラム染色・培養で起炎菌検出。   −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 @胸部X線上、区域性〜肺葉性浸潤影中の空洞壁は凹凸不整で、しばしば鏡面像をみる。
 A末梢血で好中球増多と左方移動。赤沈亢進・CRP陽性化などの炎症所見。
 B喀痰・気道吸引物などの検索で起炎菌の検出(困難なことも多い)。ときに血液培養陽性。

特殊検査所見

 @気管支鏡検査は本症の確定診断というよりは他疾患除外、あるいは基礎疾患検索のために行われる。肺癌・異物による気道閉塞の検索のため一度は行うべきである。
 A肺癌などとの鑑別にCTが有用なことがあり、状況によっては必要である。

診断

 @発熱その他全身の炎症症状、炎症を示唆する検査所見と、胸部X線上区域、肺葉性の広がりをもつ浸潤影の中に空洞を認めた場合本症が疑われ、確定は他疾患除外による。
 A鑑別上特に問題となるのは肺結核と肺癌である。新しい空洞性結核であれば3日連続検痰で大多数例で結核菌塗抹陽性となるので行うべき検査である。肺癌の空洞に鏡面像を伴うこともあるから、抗生剤で軽快のみられないときは気管支鏡擦過・生検、経皮肺生検を考える必要がある。
 Bその他鑑別が問題になる疾患は既存肺内ブラへの感染、肺吸虫症、Wegener肉芽腫症、肺放線菌症などがある。
 C抗生剤著効・陰影軽快などの臨床経過から肺化膿症であることが確実視される場合でも基礎疾患の検索は行っておく必要がある。局所性因子としては異物や腫瘍による気管支閉塞、全身性因子としては誤嚥傾向(神経疾患、アルコール中毒など)、嘔吐傾向(上部消化管狭窄、消化管手術後など)などであり、敗血症肺塞栓の場合は右心系心内膜炎(覚醒剤常用者など)、肝や骨盤内などの膿瘍、留置カテーテル感染などがある。

管理上必要な検査(表2)

  表2 管理上必要な検査
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 急性期(発熱持続中)は2〜3  │胸部単純、血算・赤沈・CRP・喀痰    
 日に1回、あとは週1回以上施行 │                    
−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−──── 週1回程度           │血液生化(抗生剤副作用)        
−−−−−−−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−──── 初診時のほか経過中に1〜2回以 │胸部断層撮影              
 上施行            │                    
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−────
 急性期には発熱の経過がもっとも治療の参考となるので、できるだけ下熱剤を用いずに熱型を観察することが重要であるが、行うべき検査としては表2に示すようなものがある。

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