概論
腎に発生する腫瘍には、腎細胞癌 renal cell carcinoma、腎盂腫瘍、腎肉腫、Wilms腫瘍などがあり、このうち80%は腎細胞癌である。ここでは腎腫瘍のうち腎細胞癌について述べる。近年超音波診断による腹部スクリーニングにより、無症候性腫瘍 incidentaloma が多く発見されるようになったとはいえ、腎細胞癌は早期診断が困難であり、また外科的治療以外には有効な治療は少ない。男女比は男2〜3:女1であり、年齢的には50歳以上70歳台に多いが、近年若年化しつつある。透析患者にみられる腎嚢胞の腫瘍化が注目されており、またvon Hippel-Lindau病に高率に合併することが知られている。
臨床症状
@血尿:肉眼的、顕微鏡的血尿を合わせ、約半数の患者にみられる。血尿は、腫瘍の腎排泄系への浸潤を意味するため早期診断とはならない。
A疼痛:腫瘍による周囲組織の圧排、腎被膜の伸展により上側腹部の鈍痛、不快感、消化器症状が出現する。また凝血、腫瘍塊が尿管を閉塞し、疝痛発作を起こすことがある。
B腹部腫瘤:大きな腫瘍や、腎下極に発生した腫瘍は触知されることがある。呼吸性に移動しない腫瘍は局所浸潤を疑わせる。
C発熱:原因不明の発熱(FUO)の患者の10〜30%に腎腫瘍がみられるといわれており、鑑別診断上重要である。腫瘍組織が発熱因子を放出するためと考えられており、腫瘍摘出により解熱することが多い。
D貧血:患者の20〜50%に正球性正色素性貧血がみられる。
E全身症状:進行癌においては体重減少、全身倦怠感、盗汗などがみられる。
表1 腎腫瘍の検査所見
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
血液および尿:@血沈値亢進とCRP陽性化、A貧血あるいは赤血球増多、BLDHAALP、γ-GTP、GPTの上昇、C高Ca血症、D血尿、E内分泌機能異常。
IVP:腎輪郭の変形、腎盂の圧排像。
Echo:種々のechogenecityをもつSOL像。
CT、MRI:@SOL、A周囲組織浸潤、Bリンパ節転移、C下大静脈塞栓。
血管造影:@hypervascular、tumor stain(+)、AAーV fistula、B腫瘍塞栓によるfilling defect。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
一般検査所見(表1)
@血沈値:30%の患者は血沈値の亢進をみ、予後不良因子である。α2グロブリン値の上昇と関係があるといわれる。
A肝機能異常:明らかな肝転移が存在しないにもかかわらずGPT、アルカリフォスファターゼ、γーGTPなど肝機能異常を認めることがある。腫瘍摘出により正常化することが多い。
B赤血球増多:血清エリスロポエチン上昇による。3〜4%にみられる。
C高Ca血症:骨転移を伴わずに生じることがあり、humoral hypercalcemia of malignancy(HHM)と総称され、種々の骨吸収促進因子があげられている。
特殊検査(画像診断)所見(表1)
@排泄性腎盂造影(IVP):腎contourの変形、腎盂腎杯の圧排像によりSOLの所見がみられる。
A超音波診断(ultra sonography):high echogenecityをもつSOLとして描出される。
BCT、核磁気共鳴断層法(MRI):腫瘍の広がりと周囲組織への浸潤度を評価でき、特に、腫瘍の血管浸潤、リンパ節転移の判定に有力である。
C血管造影:大動脈造影、選択的腎動脈造影により、血管増生、腫瘍の栄養血管AA-V fistula、tumor stainの所見がみられる。腫瘍はhyper-vascularのことが多いが10%の腫瘍はhypo-avascularである。腎静脈−下大静脈に腫瘍塞栓が疑われるときには、下大静脈造影を行いfilling defectを確かめることもある。また造影後に、腎動脈をコイルやスポンゼルで塞栓し(embolization)腫瘍の縮小を図ることがある。
診断
画像診断より比較的診断は容易だが鑑別診断として、腎盂腫瘍、腎膿胞、膿胞腎、腎結核、まれなものとして、黄色肉芽腫性腎盂腎炎、腎血管筋脂肪腫瘍がある。
管理上必要な検査(表2)
腎細胞癌の転移巣としては肺、肝、骨が多いが、脳、皮膚、甲状腺など多彩な転移を示す。腎腫瘍に特異的な腫瘍マーカーはないが非特異的マーカーとして血沈値、CRP、α2グロブリン、fibrinogen、LDHがあげられる。
表2 腎腫瘍の管理上必要な検査
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
最小限1か月間隔で施行する検査:@血沈、A血算、B生化学検査(LDH、fibrinogen、α2グロブリン)、C血清反応(CRP)、D尿検、E胸部X線撮影。
3〜6か月間隔で施行する検査:@腹部CT、A骨シンチグラム。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
[本文書の利用につきましては、目次に明記した注意事項に従って下さい]