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多血症

 岩田純一

概論

 多血症とは血液中の赤血球系(ヘモグロビン・赤血球数)が増加した状態をいう。単一な疾患ではなく、@脱水などによる見かけの多血症、A赤血球産生をコントロールするホルモンであるエリスロポエチンが種々の病態に反応して分泌されたために起こる二次牲多血症、B骨髄増殖症候群の一つである真性多血症、に大別される。本稿では主に真性多血症について述べる。真性多血症は中年以降に多く、男女比は約1.5:1で男性に多い。 
臨床症状

@皮膚粘膜症状:赤黒い顔色、口唇のチアノーゼ、眼球結膜の充血が特徴的であり多血症 を疑う端緒となる。紫斑や鼻出血等の出血傾向蕁麻疹や皮膚の掻痒感もしばしば認め られる。
A中枢神経症状:多血症による血液循環障害により、頭痛めまい、耳鳴、視力障害をき たす。一過性脳虚血発作や脳血栓症状にて受診し多血症が発見される場合も少なくない 。
B循環器症状:高血圧狭心症呼吸困難はしばしば認められる。静脈血栓症の合併も多 い。
C真性多血症:肝脾腫を伴うことが多い。

一般検査所見(表1)

@血球数、ヘモグロビンおよびヘマトクリットは増加している。通常正球性正色素性であ るが、鉄欠乏の合併がしばしば認められ、この際は小球性、低色素性となる。赤血球形 態には著明な異常は認めない。
A真性多血症においては白血球数および血小板数の増加も伴っており二次性多血症との鑑 別点となる。しかし全例に認められるわけではない。
B真性多血症では白血球分画で、顆粒球系幼若細胞の出現や好塩基球増多をしばしば認め る。
C血液生化学においてLDHおよび尿酸値の上昇をしばしば認める。         

  表1 真性多血症検査所見
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  (一般検査所見
  血算@赤血球系(赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット)の増加、
    通常正球性、正色素性、ときに末梢血に赤芽球出現。赤血球形態は著変なし。     A白血球増多、骨髄球など幼若顆粒球の出現、好塩基球増多をしばしば認める。    B血小板増多。
    C血沈、低値を示す。生化学、LDH尿酸の上昇。
    D胸部X線、原則として正常、しばしば高血圧に続発する心肥大。 
    E心電図:しばしば左室肥大および心筋の虚血性変化。             (特殊検査所見)                                  @骨髄像、過形成性で顆粒球系、赤芽球系、巨核球の3系統とも増加。
    A染色体分析、ときにdel(20).
    B血清、尿、エリスロポエチン:減少。
    C血清ビタミンB12、ヒスタミン:増加。 
    D好中球アルカリフォスファターゼ・スコア:増加。   
    E動脈血酸素飽和度:原則として正常(≧92%)。       
    F循環赤血球(51Cr法)増加。(男 >36ml/kg 女 >32ml/kg )
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特殊検査所見(表1)

@骨髄像、過形成を示し、顆粒球系、赤芽球系、巨核球の3系統とも増加が認められる。 これに対し二次性多血症では通常赤芽球系のみの増加に留まる。  
A尿、血清エリスロポエチンは、真性多血症では分泌は抑制されており低値を示すが、二 次性多血症では高値を示すことが多い。
B血清ビタミンB12、ヒスタミンは、真性多血症ではいずれも高値を示すが、二次性多血 症では正常である。
C好中球アルカリフォスファターゼスコアは真性多血症では高値を示すが、慢性骨髄性白 血病では低値を示す。
D動脈血の酸素飽和度は、真性多血症では正常(≧92%)である。先天性心疾患や慢性肺 疾患に続発する多血症では低下が認められる。

診断

 多血症を呈する患者を診察した際は、真性多血症と二次性および見かけの多血症(表2)を鑑別することが肝要である。表2に示した疾患のうち
@1〜4はその原因を除去すれば数か月で多血症は消失をみる。
A5,6は病歴、診察所見および胸部X線所見より容易に診断し得る。
B7,8の診断には、CT,血管造影などの画像診断および尿・血清エリスロポエチンの測定が 必要である。            
C異常ヘモグロビンによる多血症が疑われる際は、ヘモグロビン電気泳動による異常バ ンドの出現や、ヘモグロビンの酸素解離曲線の異常の証明により確診し得る。
D真性多血症の診断基準(Wasserman LR. 1971)を示す(表3)。
E真性多血症と他の骨髄増殖症候群(メディカル・ノート参照)との鑑別には臨床像の 他に、好中球アルカリフォスファターゼ活性や、染色体分析を行う必要がある。

  表2  二次性および見かけの多血症をきたす疾患および病態
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2.ストレス多血症
3.喫煙者(CO-ヘモグロビン)
4.高地居住者
5.右→左シャントをきたす疾患
6.肺胞低換気(肥満者、慢性肺疾患)
7.エリスロポエチン産生腫瘍(腎癌、血管腫など)
8.腎動脈狭窄
9.異常ヘモグロビン血症(ヘモグロビンM、メトヘモグロビン血症など)
10.家族性多血症
11.薬剤性(蛋白同化ホルモン、コバルトイオン)
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  表3 真性多血症の診断基準
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   大基準               小基準   
@ 赤血球 男 >36ml/kg        @ 血小板数  
     女 >32ml/kg           >400万/μl
A 動脈血酸素飽和度         A 白血球数  
   SaO2≧92%               >12000/μl
B 脾腫               B 好中球アルカリフォスファター 
 真性多血症の診断には三つの       ゼ活性>100%      
 大基準をすべて満たすか、大     C 血清ビタミンB12>900pq/ml  
 基準の1,2に加え小基準の2        あるいは          
 項目以上を満たすことが必要       不飽和B12結合能>2,200pq/ml 
 である。

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管理上必要な検査

@真性多血症の治療の目的はヘマトクリットを一定以下(<50%)に保つことにより血栓 性疾患の発生を予防することにある。この目的で、瀉血、化学治療法剤の投与が行わ れるが、その間隔や投与量の調節のため定期的な検査が必要である。
A真性多血症患者の一部は数年ないし十数年の経過の後、骨髄線維症や急性白血病の出現 をみることがあり、注意が必要である。
   
真性多血症の管理上必要な検査

2〜4週間隔で施行する検査(瀉血、化学療法施行時)
血算(赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、血小板数、白血球数、白血球分画)
生化学検査(特にLDH,尿酸値)検尿、CRP
3〜6か月間隔で施行する検査
胸部X線撮影(ブスルファン肺のチェック)、心電図

メデイカル・ノート
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骨髄増殖症候群
 Dameshekにより提唱された、慢性骨髄白血病(CML)、真性多血症(PV)、骨髄線維症(MF)、本態性血小板血症(ET)を包括する概念である。白血病であるCMLと他の3疾患を一まとめに扱うことに疑問を持つ読者もいると思うが、実際これら4疾患は、相互に移行型があり、そのいずれと診断するか決定し難い場合がある。今日では染色体分析の所見やG6P-Dアイソザイムを用いた研究により、これらの疾患はいずれも、多能性幹細胞(赤芽球系、顆粒球系、巨核球の3系統のいずれにも分化する能力を有する)レベルでの異常クローンの増殖に起因することが明らかにされている。
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