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クッシング症候群

 藤田寛子、小島 至

概論

 クッシング症候群とはコルチゾールの慢性的過剰による病態である。その原因により以下の病型に分類される。

クッシング症候群
 ・下垂体でのACTH産生過剰によるコルチゾール過剰症(クッシング病)
  −−下垂体腺腫
  下垂体過形成
 ・異所性ACTH産生腫瘍によるコルチゾール過剰症
  −−肺小細胞癌が多い、その他膵ラ氏島腫瘍、カルチノイド、甲状腺髄様癌、
    褐色細胞腫など
 ・副腎性コルチゾール過剰症
  −−副腎腺腫
    副腎結節性過形成
    副腎癌
 頻度は、クッシング病が約70%、異所性ACTH産生腫瘍と副腎腫瘍がそれぞれ十数%。クッシング病のほとんどは下垂体腺腫で女性に多く、好発年齢は20〜40歳である。

臨床症状

 @コルチゾール過剰症状
  a.脂質代謝の変化
  −−中心性肥満
    バッファローハンプ
    満月様顔貌
  b.蛋白核酸代謝の変化
  −−赤色顔貌
    皮膚線条
    易出血性
    筋力低下*
    成長障害(小児の場合)
  c.鉱質コルチコイド作用
  −−高血圧、心不全、浮腫*
  d.糖代謝異常
  −−耐糖能異常、多尿、多飲(高浸透圧性利尿、さらに低K血症性腎障害*のため)
  e.カルシウム代謝異常
  −−骨粗鬆症
    尿路結石
  f.免疫抑制
  −−易感染性
  g.中枢神経症状
  −−うつ病
 A男性ホルモン過剰症状
  −−多毛症
    月経異常
 Bその他
  −−色素沈着*
*:異所性ACTH産生腫瘍に見られる。また、浮腫低K血症のみを症状とする場合があり注意を要する。

一般検査所見

 診断の決め手となるものはないが、身体所見とともに以下の所見があれば本症の可能性は高くなる。
@白血球増多、リンパ球減少、好酸球減少(<100/mm3が多い)、低γグロブリン血症。A高血糖、耐糖能異常。
B低K血症*、アルカローシス*、高Ca尿症。
CLDH上昇・高脂血症
DX線所見:骨粗鬆症、心拡大、尿路結石
E心電図所見:心肥大、低K血症変化。
*異所性ACTH産生腫瘍の場合著明

特殊検査所見

 クッシング症候群の診断に有用な検査
・1日尿中遊離コルチゾール
 17OHCS,17KSに比べてコルチゾール過剰を正確に反映する。(正常値<100μg/日)
・1mg overnight dexamethasone抑制試験
 前夜11時あるいは12時に1mgのdexamethasoneを服用し、朝8時の血中コルチゾールの抑制状態を見る。
・夜間血中コルチゾール
 クッシング症候群における深夜11pm〜2amのコルチゾール値は上昇している。(正常値<6μg/dl)
・2mg dexamethasone抑制試験
 0.5mg×4回/日を2日間投与。2日間の尿中17OHCSの抑制状態をみる。(正常値<4mg/日 or<1mg/g尿クレアチニン

 クッシング症候群病型診断に有用な検査
・8mg dexamethasone抑制テスト
 2mg×4回/日のdexamethasoneを投与し2日目の1日尿中17OHCSの抑制状態をみる。(陽性<前値の50%)
・血漿ACTH
 副腎腺腫の場合は測定感度以下、クッシング病では正常又はやや高値、異所性ACTH症候群では高値をとる。
・メトロピンテスト
 11β-OHaseを抑制するメトロピンを投与し、コルチゾール分泌低下によって起こるACTH増加に対する副腎の反応性を尿中17-OHCSの増加反応を指標にして判定する。
・CRFテスト
 CRFを投与しACTH並びにコルチゾール増加反応をみる。
これらの機能的検査の他に病型確定には以下の諸検査が有用である。
 ・CT MRI (下垂体、副腎)
 ・エコー(副腎)
 ・静脈血サンプリング
  ACTHを分泌している部位の近くの静脈から採血すると末梢血で得られたものより高値のACTHが測定される。異所性ACTH産生腫瘍とクッシング病の鑑別に有用。

クッシング症候群の診断

 特徴的な体型、顔貌、コルチゾール過剰を示唆する一般血液データなどによりクッシング症候群を疑ったら、スクリーニングとして、1mg overnight dexamethasone抑制テストを行う。これで陰性なら先ずクッシング症候群ではない。陽性ならば次に2mg overnight dexamethasone抑制テスト、尿中遊離コルチゾール測定を行う。
 この二つが陽性ならばクッシング症候群と診断して良い。
肥満などの状態では1mg overnight dexamethasone抑制テストで擬陽性となることがあるが、2mg overnight dexamethasone抑制テストや尿中遊離コルチゾール値により除外される)
<注>
@拮結核剤の投与により肝でのステロイド代謝が亢進すると下垂体副腎系に異常がなくても尿中17OHCSが高値となる。この場合でも尿中遊離コルチゾールは正常であることからこれがよい指標になる。一方、この様な状態で dexamethasone抑制テストを行うと評価が困難になるので注意が必要。
Aうつ病やアルコールによるクッシング症候群では尿中遊離コルチゾールが上昇し抑制テスト陽性となることがある。後者に対してはアルコールを最低4週間止めてから再検討することにより、前者に対してはクッシング症候群で異常の見られることの多いインスリン負荷テストで正常反応が見られることにより鑑別できる。

クッシング病の病型診断

 原則として8mg dexamethasone抑制試験、血漿ACTH値、メトピロン試験、さらに画像診断などの情報によって以下のように病型を決定する。異所性ACTH産生腫瘍とクッシング病の鑑別が困難なときには静脈血サンプリングが必要なことがある(表1)。

  表1
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
                               副腎腫瘍
       クッシング病  異所性ACTH症候群  −−−−−−−−−−−−−−                            腺腫    結節性過形成
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
8mg抑制試験  抑制あり     抑制なし         抑制なし

血漿ACTH   正常〜高値     高値           測定不能

メトロピン試験 反応あり     無反応      無反応    反応がある場合                                 がある

画像診断   トルコ鞍に腫瘍 肺癌などの腫瘍陰影  CT,エコーで  CT,エコーで
       像があることが            腺腫像     多発性結節
       ある
静脈血    inferior petro- 腫瘍近傍でACTH       −−−−−
       sal sinusでACTH

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注:異所性ACTH産生腫瘍の多くは血漿ACTH値が異常高値で、腫瘍の存在がすでに明らかになっている場合が多く診断は比較的易しいが、なかにはACTH値が正常より僅かに高いのみの場合がある。この様な場合の診断はかなり困難で、静脈血サンプリングが必要となることもある。この様な腫瘍にはカルチノイドが多いので胸部CT等が有用である。

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