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赤血球・血色素・ヘマトクリット値・網状赤血球・赤血球像

 秋山淑子

概論

 赤血球は骨髄中でその母細胞である赤芽球が細胞分裂を繰り返したのち成熟して血中に流出してきた細胞で、正常では平均赤血球容積(MCV)90fl、平均直径7.5〜8.3μmの無核の円形細胞である。成熟過程で血清中の鉄を吸収し血色素を合成する。血色素の主な機能は肺から組織への酸素の運搬と、組織から肺への炭酸ガスの運搬である。ヘマトクリット値は全血中の占める割合を表したものである。
 赤血球は体内を循環しながら老化し120日の寿命で崩壊してゆくが、日々新しい赤血球が産生され一定数を保持している。赤芽球が成熟して赤血球になる際、脱核し細胞質のRNAが超生体染色によって網状構造を示す時期がある。これを網状赤血球と呼び、1日で成熟赤血球となる。血液塗抹標本を顕微鏡下で観察すると正常では大多数の赤血球は円形を呈しているが、特定の疾患で形態異常を示し、塗抹標本のみで診断可能なことがある。

図1 赤血球のヒストグラム
図2 計算盤
図3 ユノペットの操作法

赤血球のヒストグラム


計算盤


ユノペットの操作法


網赤血球の種々相


奇形赤血球の種々相


測定法と正常値

赤血球
 赤血球数の算定には自動計測によるものと目視による方法がある。抗凝固剤としてはEDTA-2Kが溶けやすく、血球の形態を変えない理由でもっとも適している。ヘパリンは血小板を凝集させることがあり、また時間の経過に伴い白血球の形態、特にリンパ球の形態を変えるので不適である。血液を長時間放置しておくと正常でも血球は膨化し赤血球容積が増大し、白血球も形態変化をきたすので、採血後1日以上経た検体は測定には適さない。 @自動計数法:凝固阻止した血液を全血のまま計数器にかけると血液は自動的に電解液で希釈される。浮遊した血球が吸引されて細孔を1個ずつ通過するとき、生じる電気抵抗の変化を捉え数として検出する。コールター・カウンターの場合、赤血球として測定されるのは36-360flのサイズのもので、当然白血球も数え込まれるが数が少ないので、誤差の範囲内として処理できる。赤血球の正常分布パターンを図1に示す。90fl前後のものが大部分を占め、少数の小赤血球と大赤血球とが混在する。電気抵抗方式でなく散乱光によって測定する装置もある。
 A目視法:赤血球用メランジュールで血液を200倍にHayem氏液(生理食塩水でもよい)で希釈し計算盤にいれ、図2の中央部の小区間の内の5区画を算定し次式によって赤血球数を求める。
  赤血球 = (1/16)*5*個数*200 = 個数*(10^4)
 メランジュールの代わりに図3のような器具(ユノペット)もあり、取り扱いはメランジュールより簡便である。

血色素
 @シアンメトヘモグロビン法:自動計数法では赤血球数と同時に血色素量が得られる。原理はシアンメトヘモグロビン法に基づき,血液をフェリシアンカリ・シアンカリ混合液で希釈し,シアンメトヘモグロビンとする。コールター・カウンターでは波長525nmで比色し吸光度からヘモグロビン濃度を求める。用手法では血液を251倍に希釈し,比色計を用い波長540nmで吸光度を測定し,標準物質であらかじめ作成した検量線から濃度を求める。
 Aザーリー法:0.1N塩酸をザーリー管の目盛りの10%の部位まで入れ,血液20μlを加え30分以上30〜40℃で放置して塩酸ヘマチンに変換する。蒸留水でザーリースタンドの標準色ガラスと同じ色になるまで希釈して,そのときのザーリー管の目盛りを読み取る。

ヘマトクリット管
 @自動測定:自動血球計数器を用いる場合,赤血球数と血球が細孔を通過する際のパルスの大きさから得られたMCVの値から求められる。
 A用手法:血液をヘマトクリット管の0の目盛まで入れ,3,000rpm30分,あるいは毛細管の約3/4まで血液を入れ片方を封じて12,000rpm5分遠心する。ヘマトクリット管は目盛りがついているので赤血球の高さを,また毛細管法では付属の計測板で赤血球の高さを読み取り全量に対する赤血球の全容積を%で表す。同一検体で自動法がもっとも低い値を示し毛細管法,ヘマトクリット管法の順で高い値となり,5%程度の差がみられる。

網状赤血球
 赤血球を1%ニュウメチレンブルー,あるいはブリリアントクレシールブルー・アルコール溶液と混合し約15分放置して超生体染色を施こしスライドガラスに塗抹する。1,000倍の強拡大にして顕微鏡下で観察すると,図4のような種々の網状構造を持った血球が観察できる。赤血球1,000個を算定し,その間に出現する網状を呈する血球の割合を求める。

図4 網赤血球の種々相
図5 奇形赤血球の種々相

赤血球像
 正常赤血球は塗抹標本上赤く正円形で中央部がやや薄く染色されるが,疾患によってさまざまな形態(図5)の赤血球が出現する。種々の形態の赤血球が混在する場合を奇形赤血球症と呼び,正常の赤血球よりも大型のものや小型のものが混在しているものを大小不同症と呼ぶ。形態だけでなく,青く染まる多染性や好塩基性赤血球の出現,好塩基性斑点,Howell-Jolly小体,ハインツ小体,Pappenheimer小体,アズール好性顆粒などの封入体がみられることも病的所見である。

正常値*
項目名 (単位)       男           女
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
赤血球(万/μl)        410〜530         380〜480
血色素量(g/dl)         14〜18          12〜16 
ヘマトクリット値(%)      40〜48          34〜42 
網状赤血球数(%)             0.5〜2
赤血球像          正染性正球性であること。     
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
*東大検査部の成績

                                    
異常値の意味

 @赤血球の減少,血色素の低下,ヘマトクリット値の低下を貧血といい,貧血を形態で分類すると表1のようになる。
 A男性で赤血球600万/μl,女 性では550万/μl以上,血色素18r/dl,女性で16r/dl以上,ヘマトクリット値55%,女性50%以上の場合,赤血球増加症と考えられる。循環血漿量が減少して相対的に赤血球が増加する場合,エリスロポエチンの増加,心肺疾患や高地滞在などでの組織の低酸素に起因して赤血球の産生が亢進し二次的に増加する場合,および真性多血症がある。
 B網状赤血球は骨髄での赤血球産生の状態を表し,貧血の回復時や溶血性貧血では高値を示し,再生不良性貧血や抗癌剤使用時など骨髄での産生抑制や無効造血などでまったくみられないこともある。
 C赤血球形態の異常を示す疾患などを表2に示した。

  表1 貧血の分類(Wintrobeより)
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原因と疾患
 1.大球性:A.巨赤芽球性:1)VB12欠乏,悪性貧血,2)葉酸欠乏,栄養性巨赤芽球性貧血吸収不良症候群。B.非巨赤芽球性:1)造血促進:溶血性貧血,出血後,2)膜表面積の増大:摘脾後,肝疾患,閉塞性黄疸,3)不明:粘膜水腫,低-無形成貧血。
 2.低色素性小球性:1)鉄欠乏性貧血,2)グロビン合成の異常,サラセミア
 3.正色素性正球性:1)急性血液喪失,種々の疾患,2)血漿の増加,妊娠,水血症,3)溶血,溶血性貧血,4)再生不良性骨髄,再生不良性貧血,赤芽球癆,5)骨髄浸潤,白血病,骨髄腫,骨髄線維症など,6)内分泌異常,甲状腺機能亢進症,副腎機能異常,7)腎疾患,8)肝疾患。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  表2 赤血球形態の異常と主な疾患
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   赤血球の形態 |      |    疾   患   名      
−−−−−−−−−+−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
   球状赤血球  |spherocyte |遺伝性球状赤血球症,自己免疫性溶血性貧血
         |      |鉄欠乏性貧血
   楕円赤血球  |elliptocyte |遺伝性楕円赤血球症,サラセミア,悪性貧血
         |      |再生不良性貧血
   鎌状赤血球  |sickle cell |鎌状赤血球貧血            
   標的赤血球  |target cell |サラセミア,閉塞性黄疸,摘脾後鉄欠乏性貧血
         |      |LCAT欠損症
   棘状赤血球  |acantocyte |β-リポ蛋白欠損症           
         |echinocyte |ピルビン酸キナーゼ異常症      
   涙滴赤血球  |tear drop  |骨髄線維症,サラセミア        
   有口赤血球  |stomatocyte |遺伝性有口赤血球症          
   破砕赤血球  |red cell  |DIC,人工弁置換後,不安定ヘモグロビン症,
         |fragment  |遺伝性熱変形赤血球
   好塩基性斑点 |basophilic |鉛中毒,サラセミア          
         |stippling  |                   
   ハインツ小体 |Heinz body |不安定ヘモグロビン症         
   連銭形成   |      |多発性骨髄腫             
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メディカル・ノート
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 リコンビナント・エリスロポエチンの応用:生体内には微量にしか存在しない赤血球の産生調節ホルモンであるエリスロポエチンが遺伝子工学によって大量に生産できるようになった。これにより慢性腎不全患者の治療に応用できる。
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