概論
@血漿蛋白は血漿中に最も多量に含まれる成分で,約8%を占める。
A現在80種類以上の血漿蛋白がしられている。総蛋白量の7割以上がアルブミンと免疫グロブリンである(図1)。
Bアルブミンは血漿膠質浸透圧の維持,各種物質の運搬等の機能を営んでいる。アルブミン代謝を表1に,アルブミンに結合する主な血中物質を表2に示す。
C免疫グロブリンは抗体産生リンパ球で産生される。IgG最も半減期が長く約23日である(別項免疫グロブリン定量:p.456参照)。
図1 血漿蛋白の主成分(%)
血漿蛋白の主成分(%)
表1 アルブミン代謝
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@合成:A.肝細胞で:proalbumin合成,albuminへ変換,albumin分泌。B.合成の調節因子:(1)蛋白質,アミノ酸摂取量減少→低下(例:低栄養状態)。(2)血漿膠質浸透圧低下→亢進(例:ネフローゼ症候群)。(3)成長ホルモン,甲状腺ホルモン,Insulin,ハイドロコーチゾン,→亢進。
A異化:A.筋肉,皮膚などで:窒素源,エネルギー源などに利用。B.異化の調節因子:(1)アルブミン合成低下→低下。(2)Insulin→低下。
D血中半減期:通常約19日間。
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表2 アルブミンと結合する主な血中物質
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@脂肪酸。A二価遷移金属イオン:Cu,Ca,Mg,Zn,Hg,Pb,など。B各種アミノ酸。C各種ホルモン。D色素:ビリルビンなど,Bromo Cresol Green(BCG) :アルブミン定量。E各種薬物(メディカル・ノート参照)
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検査の意義
@総蛋白量は一般には栄養状態の指標としてルーチンに調べられることが多い。また多発性骨髄腫などの高蛋白血症をきたす疾患の経過観察で,簡便なパラメータとなる。
Aアルブミン量は,低アルブミン血症の結果,腹水,浮腫をきたす肝硬変,ネフローゼ症候群などの疾患で,経過観察および治療の良いパラメータとなる。
BA/G比から得られる情報量はきわめて限られたものであり,アルブミン定量,蛋白分画により代用可能である。
C血漿蛋白は情報量が多く初診時にスクリーニング検査として行われる場合が多い。以下に述べる異常パターンがあり,変動をきたす疾患を推定することができる。γ-グロブリン上昇をきたす疾患などでは経過観察にも用いられる。
測定法と正常値(表3)
表3 測定法と正常値
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| 測定法 | 正常値
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総蛋白 |比色法(Biuret法) | 6.5〜8.0g/dl
アルブミン |比色法(BCG法) | 3.7〜5.5g/dl
A/G比 |比色法(Biuret法,BCG法) | 1.3〜2.0
|電気泳動法 | 1.4〜2.4
蛋白分画 |電気泳動法 |Alb 58.9〜71.8%
| (セルロースアセテート膜)|α1 2.0〜3.9%
| |α2 6.3〜10.6%
| |β 8.9〜10.6%
| |γ 8.9〜20.3%
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@蛋白定量にはさまざまな方法があるが臨床検査としてはBiuret法が最も一般的に行われている。アルブミンは色素(Bromo Cresol Green)に結合する性質を利用して定量する。
AA/G比の正常値は塩析法では1.0〜1.5である。セルロースアセテート膜法では,アルブミンがグロブリンに比し数10%色素吸着能が高いことから,A/G比は高めとなる。
B電気泳動は蛋白質の荷電状態の差を利用して分画する方法である。現在支持体としてセルロースアセテート膜が最も広く用いられている。膜の種類や泳動条件によってかなりの変動があり,画検査室によって正常値が決められている。表はその1例を示す。
C検体保存:血清蛋白は比較的安定である。蛋白量測定用検体は長期凍結保存が可能である。蛋白分画は1か月程度の凍結保存安定である。
D採血条件:溶血は高度のものでない限り総蛋白量に影響を与えない。高度の黄疸,乳び血清では補正を行う。
異常値の意味
@低蛋白血症:主にアルブミンの減少による。低蛋白血症をきたす疾患を表4にまとめる。
A高蛋白血症:主に免疫グロブリンの増加による。多クローン性の増加(多数の抗原に対するさまざまな抗体が増加している状態)と単クローン性の増加に分類される(表5)。後者は電気泳動でM蛋白と呼ばれる鋭いピークを示し,鑑別診断には免疫電気泳動(別項pM475参照)が有用である。
B血清蛋白電気泳動の5つのピークに含まれる主要な血清蛋白を表6に示す。電気泳動による血清蛋白像の分類を表7に示す。
表4 低アルブミン血症,低蛋白血症をきたす病態
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@低栄養状態Y蛋白摂取不足K呼吸不良症候群K蛋白異化の亢進。
A蛋白の漏出Y蛋白漏出性胃腸症,浸出性皮膚疾患,失血,ネフローゼ症候群胸水,腹水。
B肝での合成能低下Y肝硬変,急性肝不全,ある種の抗癌剤。
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表5 高蛋白血症をきたす病態
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@脱水による血液濃縮
A免疫グロブリンの増加
AM多クローン性増加Y慢性感染症,膠原病,自己免疫性疾患,肝硬変,慢性肝炎など。
BM単クローン性増加Y多発性骨髄種,マクログロブリン血症,H鎖病、本態性M蛋白血症。
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表6 電気泳動の各分画に含まれる主な血漿蛋白成分( 血液凝固因子と補体系は除く)
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| 血漿蛋白成分 |正常血清濃度 | 生物学的機能
| |成人(mg/dl) |
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Alb |Albumin | 3500-5500 |本文参照
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α1 |αl-Acidglycoprotein | 55-140 |急性相反応物質
|αl-Antitrypsin | 200-400 |急性相反応物質
| | |プロテアーゼの抑制
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α2 |Haptoglobin | 380-780 |急性相反応物質
| | |ヘモグロビンと結合
|α2-Macroglobulin |(M) 150-350 |プロテアーゼの抑制
| |(F) 175-420 |ホルモンとの結合
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β |Hemopexin | 50-115 |ヘムと結合
|Transferrin | 200-400 |鉄と結合,運搬
|β-Lipoprotein |(M) 220-740 |LDL
| |(F) 190-600 |
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γ |lgA | 90-450 |抗体
|lgM |(M) 60-250 |抗体
| |(F) 70-280 |
|lgG | 800-1800 |抗体
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メディカル・ノート
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@還元型アルブミンと酸化型アルブミンY還元型アルブミン(メルカプトアルブミンYHMA)はSH基を1個有するアルブミンで,酸化型アルブミン(ノンメルカプトアルブミンYHNA)はこのSH基にシステイン,グルタチオン等が 合した状態である。健常人ではHMA/HNA比は7 Y3である。両者の生理的機能に関しては不明な点が多い。HNAはそのSH基によってさまざまな物質と結合 運搬,解毒等を行っていると考えられている。最近高速度液クロによって両者を簡便に分離することが可能になった。HMA/HNA比の臨床的意義について 今後の検討を待たねばならない。慢性透析患者の透析前,肝硬変患者,市販のアルブミン製剤などにおいてHMA/HNA比の低下が報告されている。
A併用薬物による置換現象Yアルブミンと結合する薬物を使用している患者では,同一部位に,より高い親和性をもつ他の薬物を併用した際に,薬物の組織移行性が影響を受け過剰の薬効が現れることがある。例えば経口糖尿病薬トルブタミド使用中の患者でサリチル酸を使用した際に低血糖を起こすことがある。この他に抗凝固剤のワーファリン,抗癌剤のメソトレキセートを使用している患者などで,併用によってその作用を増強させる薬物があり注意が必要である。
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表7 電気泳動による血清蛋白像の分類
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血清蛋白分画像|T.P.|Alb α1 α2 β γ | コメント
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@栄養不良型 | ↓ | ↓ ↓ ↓→|
A蛋白脱出型 | | | すべての分画が低下
非選択性 | ↓ | ↓ ↓ ↓ ↓ |
選択性 | ↓ | ↓ ↑ ↑ ↓ |α2-Macro G,β-Lipo P
| | |などの巨大分子蛋白が残る
B肝障害型 | | ↓ ↓ ↓ ↓↑ ↓ |肝のAlb-α2グロブリン産
| | |生低下多クローン性Ig増加
急性 | | ↓ ↑ ↑ |急性相反応性物質増加
慢性 | | ↓ ↑ ↑ ↑ |γグロブリン増加が加わる
D多クローン性 | | ↑ |表5参照
γグロブリン増加| | |
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