概論
GOT(glutamic oxaloacetic transaminase),GPT(glutamic pyruvic transaminase)は主に肝,筋細胞内に,また,LDH(lactate dehydrogenase)はほとんどすべての組織に存在する細胞内酵素で,その血清活性上昇はそれらの組織の変性・壊死の存在を意味し,逸脱酵素と呼ばれる。
@これらは臓器特異性のない酵素であるが,GPTは肝特異性が比較的高い。またLDHには5種類のアイソザイムがあり,障害臓器の推定に有用である(LDHアイソザイムの項参照)。
A血清活性値は,一般に,細胞障害の程度に従い上昇する。しかし,厳密にいうと,その値は細胞内含有量や細胞膜透過性などの多因子で決定されるため細胞変性・壊死の程度に必ずしも比例しない。
測定法と正常値
@GOT,GPT:本邦では一般に,Wroblewski-Karmen法とReitman-Frankel法が用いられている。前者は,生成物(GOTではピルビン酸,GPTではオキサロ酢酸)を別の酵素で還元し,その反応時の際の補酵素NADHの減少を吸光度340nmで測定するもので,自動分析器の普及に伴い広く用いられるようになった。後者は生成物をヒドラゾン化して比色定量するもので,発色条件の安定性等に問題があるが,簡便であるため現在でも使用されている。酵素の単位は,国際単位での表示もあるが,本邦ではKarmen単位が一般的である。
ALDH:この酵素は乳酸とピルビン酸の変換を可逆的に触媒するため,多くの測定法が考案された。最も一般的な方法では,ピルビン酸を基質とし,乳酸産生の際の補酵素NADHの減少を吸光度340nmで測定し定量する。
測定上の注意
採血や検体取り扱い中に溶血が起こると赤血球内の酵素が逸脱し,特にLDH,GOT活性値が見かけ上高くなるので注意を要す。
正常値
GOT:5-40KU
GPT:0-35KU
LDH:100-600U(Wroblewski & La Due法)
500-400 Wroblewski 単位 (Cabaud & Wroblewski法)
異常値の意味
@GOT,GPT:上昇をきたす疾患を表1に示す。その異常値を判読する際には,常に両値の相互関係を考慮する必要があり,その相互比は,特に慢性肝炎と肝硬変,ウイルス性とアルコール性肝炎の鑑別に役立てられている。以下,その比に影響する因子を示す。
a.含有量の臓器差(表2):心・筋・溶血性疾患ではGOTの上昇がGPTに比し著明で,肝疾患とは異なりGPTは正常(稀に軽度の上昇)である。
b.肝小葉内分布の差:GOTは小葉内にほぼ均一に分布するのに対し,GPTは中心静脈周囲より門脈域に強い分布の勾配を有する。このことは,アルコール性肝障害ではGOT優位で,ウイルス性慢性肝炎(特に活動性)ではGPT優位であることに一部関与していると推定される。
c.半減期:血中での半減期はGOTで11〜15時間に対し,GPTでは41時間と長い。
d.急性肝炎急性期ではGOT優位であるが,その回復期や慢性肝炎ではGPT優位であるのはこのことが原因していると考えられる。
e.その他:トランスアミナーゼ(GOT,GPT)はビタミンB6を補酵素とするため,その欠乏は活性値の低下をきたし,その低下程度はGPTの方が強い。したがって飲酒家やINH服用者ではビタミンB6欠乏が生じやすく,血清GPT低値を示すことがある。一方,副腎皮質ステロイド剤の使用によりGPT合成が誘導され,GOT/GPT比が低下することがある。肝硬変,肝細胞癌では通常GOT優位となるが,その機序は明確ではない。
ALDH:その血清活性高値を示す疾患を表3に示す。LDH/GOTの比は肝より他臓器の方が高い。このため,肝疾患(転移性肝癌を除く)では,血清LDH(Wroblewski単位)/GOT(Karmen単位)比は一般に10以下となるが、他の疾患では10以上であることが多い。
表1 GOT、GPTのヒト臓器別分布
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組 織 | GOT | GPT
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心 筋 | 156,000 | 7,100
肝 | 142,000 | 44,000
骨格筋 | 99,000 | 4,800
腎 | 91,000 | 19,000
膵 | 28,000 | 2,000
脾 | 14,000 | 1,200
肺 | 10,000 | 700
血 清 | 20 | 16
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Karmen単位/lg湿重量(Wrosblewski F, La Due JS :Proc Soc Exp Biol Med 91:569,1956より改変)
表2 高トランスアミナーゼ血症を呈する疾患
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@高度上昇(500KU以上)
激症肝炎(GOT/GPT)
急性肝炎(初期GOT>GPT,回復期GPT>GOT)
A中等度上昇(100〜500KU)
慢性肝炎(GPT>GOT)
アルコール性肝炎(GOT>GPT)
閉塞性黄疸(GOT>GPT)
心筋梗塞、筋疾患、溶血性疾患(GOT>GPT)
B軽度上昇(150KU以下)
慢性肝炎(GPT>GOT)
アルコール性脂肪肝、線維肝(GOT>GPT)
過栄養性脂肪肝(GPT>GOT)
肝硬変(GOT>GPT)
肝細胞癌(GOT>GPT)
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表3 高LDH血症を呈する疾患
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@心肺疾患
a)急性心筋梗塞、心筋炎
b)肺梗塞、間質性肺炎
A骨格筋疾患
a)進行性筋ジストロフィー
b)皮膚筋炎、多発性筋炎、ステロイドミオパチー
c)筋痙攀、過激な運動後
B血液疾患
a)悪性貧血
b)溶血性疾患
c)悪性リンパ腫、白血病
C肝疾患
急性肝炎、うっ血肝
Dその他
a)悪性腫瘍
b)脳血管障害
c)腎梗塞
d)伝染性単核球症
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メディカル・ノート
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m-GOT(mitochondrial GOT):GOTは主に細胞質に存在するが、一部ミトコンドリアにも存在する。このm-GOTの血清活性の上昇は、ミトコンドリアに障害のみられるアルコール性肝障害やReye症候群で認められる。健常者では、血清m-GOT活性は総GOT活性の5%程度であるが、多くの大酒家は10%以上となり、アルコール中毒の検出法として有用との報告もみられる。
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