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免疫グロブリン

 山田昭夫

概論

 免疫グロブリンの生物学的活性としては、抗体活性を持つことを特徴とし、細菌などの外来抗原に対する防御因子としての役割が強いが、自己免疫疾患では自己成分に対する抗体(自己抗体)が出現し、病因として働くことがある。
 ヒトの免疫グロブリンIgGIgAIgMIgDIgEの5種類があり、それぞれ生物学的活性は異なる。例えば、IgMは一次免疫応答を、IgGは二次免疫応答を司り、IgAはsecretory componentと結合して分泌され、感染防御機構としての役割を持つ。IgEは抗原と結合しヒスタミンなどの化学伝達物質を放出させることによるアトピー性疾患の発症に関係する。IgDはマウスでは免疫学的記憶機構などに関係しているが、ヒトでの役割は全く判っていない。IgGはさらにIgG1、IgG2、IgG3、IgG4の4種類のサブクラスに分かれ、補体結合性、リウマトマイド因子との結合性、減感作療法でのIgG4の抗体の関与、など生物活性に差があるが、臨床的には今のところ測定の意味はない。
 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
|    −−−−−− Fab −−−+−−− Fc −−−−−−−    |
|    −−−−−− (Fab)2 −−−−               |
|       VL      CL                    |
|   L鎖−−−−−−−−−−−−−                 |
|                 S                 |
|       VN      CH1  S    CH2    CH3       |
|   H鎖−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−   |
|           112    220 S S  330      446   |
| N末端                S S            C末端|
|   H鎖−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−   |
|                 S     Fc レセプター結合部位  |
|                 S    ↑↑↑  ↑       |
|   L鎖−−−−−−−−−−−−−    リウマトマイド因子結合部位|
|                    ↑          (IgG) |
|  抗原結合部位             補体結合部位        |
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
図1  免疫グロブリンの基本構造 (IgG)

免疫グロブリンの基本構造(IgG)


 免疫グロブリンの基本構造は、図1に示すようなものであり、H鎖(Heavy chain)とL鎖(Light chain)により構成されている。H鎖はそれぞれγ鎖α鎖μ鎖δ鎖ε鎖、となるが、L鎖は各クラス共通でκ鎖λ鎖の両者がある。IgAはこの基本構造が2分子結合していることもあり、IgMは基本構造が5分子結合しているものである。これら免疫グロブリン各クラスの生物学的性質、化学的性質を表1に示す。

  表1 ヒト免疫グロブリンの性質
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
         |  IgG  |  IgA  | IgM  | IgD  | IgE 
−−−−−−−−−+−−−−−+−−−−−+−−−−+−−−−+−−−−
サブクラス    |  IgG  | IgA1,2 | IgM1,2 |  ?  |  ? 
         | 1,2,3,4 |     |    |    |    
沈降定数     |  7S  |  7S  | 19S  |  7S  |  8S 
         |     |(9S,11S, |    |    |    
         |     |  13S)  |    |    |    
分子量      | 150,000 |160,000〜 |900,000 |180,000 |200,000
         |     | 385,000 |    |    |    
H鎖(L鎖)     |γ(κ>λ |α(κ>λ |μ(κ> |δ(κ> |ε(κ>
         |)     |)     |λ)   |λ)   |λ)  
生体内半減期(日) |  23  |  5.8  | 5.1  | 2.8  | 2.3 
異化率(DN日)   |  6.7  |  25  |  18  |  37  |  89 
合成率(rNsN日) |  33  |  24  | 6.7  | 0.4  | 0.02 
胎盤透過性    |  +  |  −  |  −  |  −  |  − 
補体結合性(Clq)  |  +  |  −  |  +  |  ?  |  − 
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

測定法と正常値
 1. IgGIgAIgMIgD
 一般的には一元放射免疫拡散法(single radial immunodiffusion、SRID)あるいはレーザーネフェロメトリーにより測定される。
 一元放射性免疫拡散法は免疫グロブリンに対する抗体を寒天ゲル内に埋め、ウェルにいれた検体の抗原抗体反応沈降輪の大きさで測定するものであるが、分子量による差があるので、欠点として、小分子になったもの(例えばH鎖、7SIgM)の存在により測定が不正確になることがある。
 レーザーネフェロメトリーは抗原抗体結合物によるレーザー光の散乱の変化を捉えるものであるが、精度がよく、微量測定が可能であり、手技も簡単で自動化もされているので現在はほとんどこの方法が用いられている。欠点としては乳び血清など混濁のある血清では不正確になることくらいである。
 2. IgE
 RISTとPRISTの測定法が一般的であるが、最近では、アイソトープの代わりに酵素を用いる酵素抗体法(EIA)も利用されている。
 RISTはチューブに被覆した抗IgE抗体とアイソトープでラベルした抗IgE抗体によるサンドイッチ法により測定するものであり、PRISTはチューブの代わりにペーパーディスクに被覆するものである。RISTは比較的低濃度領域で信頼性がある。
なお、IgEの正常値に関しては潜在性のアトピー患者が多いので、何をもって正常とするかに問題がある。

正常値
 IgG   800〜1600 mg/dl
 IgA   140〜400  mg/dl
 IgM   50〜200  mg/dl
 IgD    0〜40  mg/dl
 IgE   10〜350  U/ml
注:測定施設により正常値に多少の差がある。

異常値の意味(表2)   

  表2 IgGIgAIgMの異常をきたす疾患
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      |IgG IgA IgM |     疾患の種類           
−−−−−−+−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
単クローン性| ↑↑ ↓  ↓ |IgG型骨髄腫、γ鎖病           
ガンマグロブ−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
リン増加  | ↓  ↑↑ ↓ |IgA型骨髄腫、α鎖病           
      −−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      | ↓  ↓ ↑↑|原発性マクログロブリン血症μ鎖病    
      −−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      | ↓  ↓  ↓ |IgD型骨髄腫、IgE型骨髄腫、ベンスジョーンズ型骨髄腫
−−−−−−+−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
多クローン性| ↑  ↑  ↑ |膠原病(SLEPSS、RA、シェーグレン症候群)慢性感染ガンマグロブ|       |症(結核など)          
リン増加  |       |慢性肝疾患(肝硬変慢性肝炎原発性胆汁性肝硬変症      |       |)                
      |       |リンパ性疾患(サルコイドーシス、悪性リンパ腫、免疫      |       |性リンパ節症ウイルス感染(麻疹など
      |       |)。                   
−−−−−−+−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
原発性免疫不|↓↓ ↓↓ ↓↓|Bruton型免疫不全症、Swiss型免疫不全症  
全症    −−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      | → ↓↓ → |選択的IgA欠損症、ataxia telangiectasia 
−−−−−−+−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
続発性免疫不| ↓  ↓  ↓ |リンパ性疾患(Hodgkin病、悪性リンパ腫、リンパ性白全症    |       |血病)              
      |       |蛋白喪失性疾患(蛋白喪失性胃腸症、ネフローゼ症候群      |       |)                
      |       |免疫グロブリン産生障害(ステロイド剤、免疫抑制剤使      |       |用)               
      −−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      | ↓  ↓  → |選択的蛋白喪失(ネフローゼ症候群
      −−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
      | ↓  →  → |myotonic dystrophy
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 表2に異常値の出現する疾患を示す。IgGIgAIgMIgD、は主として多発性骨髄腫の診断および治療の指標として有用である。また、自己免疫疾患の臨床的定義の一つに高ガンマグロブリン血症があり、その診断に重要な情報となる。IgEは一般的には気管支喘息患者の診療の際、内因性か外因性かの鑑別、治療方針の決定にRASTとともに用いられるが、そのほかにも各種疾患で上昇する。

  表3 IgDの異常をきたす疾患
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
IgDを示す疾患   | IgD型骨髄腫、他                 
−−−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
IgDを示す疾患   | IgD型以外の骨髄腫、他              
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  表4 IgEの異常をきたす疾患
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
IgEを示す疾患
 アトピー性疾患(アトピー性気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎)
 寄生虫疾患(特に線虫、吸虫、条虫などの蠕虫類)
 高IgE症候群
 PIE症候群
 軟部好酸球肉芽腫ー木村氏病
 腫瘍性疾患(IgE型骨髄腫)
 先天性免疫不全症(Wiscott-Aldrich症候群、DiGeorge症候群、Nezelof症候群)
IgEを示す疾患
 IgE型以外の骨髄腫
 ataxia telangiectasia
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

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