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意識障害

 江藤文夫

概論

 意識は脳幹網様体の上行性賦活性系によって維持される覚醒と、主として視床から大脳皮質への非特異的投射系によりつかさどられる意識的内容(認識機能の保持)からなる。通常、前者ないし両者の機能低下により脳の全体機能が障害された状態が意識障害である。後者の全般的機能低下が主である場合には痴呆や失外套症候群なども含まれるが、通常は分けて論じられる。意識障害を生じる疾患は、脳血管障害脳腫瘍など器質的脳損傷によるものに加えて、低酸素血症、血糖異常、電解質異常などの代謝障害も含めて多彩に存在し、病歴、神経学的所見、一般理学所見、諸種検査所見に基づいて、始めて鑑別が可能となる場合がまれでない。

病歴からのアクセス

 @発症様式: 急性発症か緩徐な発症か。
 A経過: 症状の変動性の有無。
 B誘因: 先行感染(特に口腔、耳鼻科領域)を疑わせる症状の有無、薬物服用の可能性、てんかんの既往、糖尿病、心、肝、腎疾患の既往など。
 C随伴症状: 片麻痺、病的反射、瞳孔異常などの神経学的異常所見、発熱、異常口臭(呼吸臭)、皮膚乾燥、黄疸、血圧上昇、不整脈の有無など。

主要症候からのアクセス

症状の重症度の把握
 一般的な用語: 昏睡、昏迷または半昏睡、傾眠の順に軽度になる。せん妄あるいは錯乱状態は意識内容の障害が目立ち、覚醒はある程度保たれている(定義は必ずしも明確ではない)。

  3・3・9度方式 (日本昏睡尺度
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
V 刺激をしても覚醒しない状態
 300. 痛み刺激に反応しない。
 200. 痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめる。
 100. 痛み刺激に対し、はらいのけるような動作をする。
U 刺激をすると覚醒するが、刺激をやめると眠り込む
 30. 痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと辛うじて開眼する。
 20. 大きな声または体を揺さぶることにより開眼する。
 10. 普通の呼びかけで容易に開眼する。
T 刺激しないでも覚醒している状態
 3. 自分の名前、生年月日がいえない。
 2. 見当識障害がある。
 1. 大体意識清明だが、今一つはっきりしない。

神経症状の把握−病変部位の診断
 @除皮質固縮(上肢屈曲し下肢伸展位):両側大脳皮質および白質の広汎 な破壊。
 A人形の目現象消失:脳幹障害。 
 Bカロリック試験の異常:脳幹障害。 
 C髄膜刺激症状。 
 D片麻痺などの左右差。

臨床検査のアクセス

原因疾患の鑑別に必要な検査
 @血沈。
 A血算、白血球分画。
 B血液生化学(総蛋白,アルブミンLDH、GOT、GTPAALP、B.I、TTT、ZTTNaCl、K、Ca、P、BUN、CRNN、FBS、NH3)、血漿浸透圧。
 C血清学的検査CRP抗核抗体、各ウイルス抗体)。 
 D血液ガス(pH,酸素分圧、炭酸ガス分圧、酸素飽和度)。 
 E尿検査、尿浸透圧。 
 F胸部X線。 
 G頭部X線、CTスキャン、MRI。
 H心電図。
 I頭部CTスキャン。
 J髄液検査(圧、蛋白、細胞数、糖、培養)。
 K眼底検査。

診断の確定へ

 @頭部外傷:直後からは脳振盪、脳挫傷。平清期(数時間以内)を有する場合は硬膜外血腫。数日以降では硬膜下血腫を疑う。
 A髄膜炎脳炎:髄膜刺激症状より発熱の先行する例が多い。
 B脳血管障害:病歴、神経症状、頭部CTスキャンなどの検査所見から容易に診断される。
 C呼吸性脳症:換気障害を有する基礎疾患があり、動脈血酸素分圧低下、炭酸ガス分圧上昇がみられる。
 D代謝性脳症:血糖、アンモニア、電解質異常を生じる基礎疾患を把握しておくことで診断される。SIADHは低浸透圧血症を伴った低Na血症があり、臨床上脱水の徴候を欠き、尿の浸透圧は血漿のそれより高く、Na排泄が持続し、腎機能および副腎機能は正常な場合に診断される。

鑑別すべき疾患

 脳血管障害高血圧性脳症を含む)AAdams-Stokes症候群、脳腫瘍てんかん、低血糖、高血糖、肝性脳症、呼吸性脳症、中毒、バセドウ病クリーゼ、髄膜炎脳炎、頭部外傷など。

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