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心雑音

 羽田勝征

概論

 生理的に存在する収縮期の駆出性雑音機械性雑音)とは音量、部位、音調が明らかになっているときに異常と判定する。拡張期雑音は全て異常である。時相の決定は心音図検査にて行う。異常心音に伴った心雑音は異常として扱う。異常心音と同様に他の検査により疾患の裏付けのない収縮期雑音は異常とすべきでない。

聴診からのアクセス

 @機能性雑音:T音、U音の異常駆出音を伴わないLevine V/W度以下の収縮早期雑音で、最強点は限局せず、胸骨左縁から心尖部内側で聴取されるのを特徴とする。若年者で肺動脈領域に限局する収縮中期雑音も機能性である。また、若年者のブーンとうなるような楽音様雑音(Still雑音)も機能性雑音である。
 A異常な心雑音:a.Levine W/Y度異常の全ての雑音。b.Levine V/W度以下の雑音でも以下の所見を有するとき、i.異常心音、過剰心音、ii.収縮後期雑音の全て、iii.前収縮期雑音の全て、iv。高調な収縮期早期雑音でかつ限局性のとき、v.拡張期雑音の全て、vi.連続性雑音の全て。c.心膜摩擦音。

心音図検査からのアクセス

 アーチファクトとの鑑別や音量の決定は聴診にて行う。
 @心雑音の時相と持続:心音図検査は容易である。収縮早期にピークを持つ雑音は駆出性であり、半月弁、流出路を通過する血管雑音である。機械性雑音か狭窄性雑音である。収縮中期雑音は肺動脈領域を除けば異常雑音の可能性が大きい。半月弁狭窄、肥大型心筋症が考えられる。駆出音があれば前者を、W音があれば後者を考慮する。T音に始まり漸減する収縮早期雑音は特にそれが高調な時は房室弁逆流が疑われる。収縮後期雑音は全て異常であり、僧帽弁か三尖弁の逆流を意味する。房室弁解放まで、U音を越えて持続するのが特徴である。全収縮期雑音は房室弁逆流か心室中隔欠損である。いずれもV音、拡張期ランブルを伴うことがある。低調な輪転機雑音(ランブル)はV音の時期より早く、開放音から始まる。同調律では前収縮期に漸減する雑音で房室弁(多くは僧帽弁)狭窄によるものである。人工弁による機能性では持続は小さく、音量も小さい。U音大動脈成分で始まる潅水様雑音は大動脈閉鎖不全で、U音分裂があり、U音肺動脈成分からやや遅れる雑音は音調もやや低調な肺動脈弁閉鎖不全である。連続性雑音は動脈管開存、冠動静脈瘻、等の左右短絡疾患を示唆する。典型的心膜摩擦音は収縮期、拡張早期、拡張末期の三相性であり急性心膜炎の徴候である。
 A心雑音の最強点と放散方向:時相とともに大切な所見である。心音図によらざるを得ない場合がある。心室中隔欠損は胸膜左縁であり、僧帽弁逆流は心尖部から左縁か腋窩に放散する。肥大型閉塞性心筋症の雑音は胸骨右縁、頚部には伝達しにくい、肺動脈狭窄は胸骨第2第3肋間より上方、又背部でも記録される。

診断の確定へ

 心音図検査のみでは決して確定診断へは至らない。心エコー、ドプラー、心カテーテル検査にて確定する。
 @弁閉鎖不全:房室弁逆流はT音から始まりU音を越えて持続する弁直下の広帯域シグナルにて確定する。雑音の時相に関わらず原則として前収縮期性である。カラードプラー法によれば検出はより容易となる。断層心エコー図にてリウマチ性(弁の肥厚、狭窄、石灰化)、逸脱、腱索断裂、疣贅の鑑別も可能である。半月弁逆流もカラードプラー法にて確定する。手術の適否は心血管造影による逆流の評価が大切である。軽症逆流の評価は総合的に行う。
 A弁狭窄:僧帽弁、三尖弁の狭窄は断層法にて行い、その圧較差、弁口面積は連続はドプラー(それぞれ 4*(流速^2)、220/圧半減時間)にて推定する。半月弁狭窄は手術
を考慮する場合にのみ心カテーテル法にて決定する。
 B短絡疾患:心房中隔欠損は心エコー法にても十分診断できるが、短絡そのものの証明は心室中隔欠損のそれと同様、カラードプラーにて行う。その他の短絡疾患は心血管造影にて確定する。
 C肥大型心筋症:心エコー図にて診断可能である。閉塞の有無はSAM(僧帽弁の収縮期前方運動)連続はドプラーによる圧発生の推定から行い、最終的には心カテーテル検査による。虚血性心疾患に伴う雑音の評価にはカテーテル検査のよる冠動脈造影と左室造影による左室瘤、その他合併症のチェックが大切である。
 D心膜摩擦音その他の雑音:心エコー、ドプラーにて評価されるが、心嚢貯留を除いて、音源のわからない場合も存在する。

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