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高血圧

 木村健二郎

概論

 高血圧症は最大血圧および(あるいは)最小血圧が高いことを主徴とする疾患群である。WHOの専門委員会の規準では最大血圧160mmHg以上でかつ(又は)最小血圧95mmHg異常を高血圧と定義している(表1)。原因疾患の明らかな二次性高血圧と、原因疾患の明らかでない本態性高血圧に分かれる(表2)。高血圧の診断と検査においては@二次性高血圧の鑑別と、A高血圧による臓器障害の程度の評価の二つが重要なポイントである。

  表1 WHO専門委員会による分類(成人の場合)
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 @血圧値による分類:正常血圧:最大血圧≦140mmHgおよび最小血圧≦90mmHg。境界型高血圧:最大血圧141〜159mmHgおよび/または最小血圧91〜94mmHg。高血圧:最大血圧≧160mmHgおよび/または最小血圧≧95mmHg。
 A臓器障害の程度による分類:高血圧の病期:第1期:臓器障害の客観的徴候が明らかではない。第2期:少なくとも次の徴候の1つがある。:左室肥大(理学所見、胸部X線、心電図あるいはエコー図で)、網膜細動脈の狭細化、蛋白尿、血漿クレアチニンの軽度上昇。第3期:次の事項の症状と徴候の両者が認められる。:左心不全、☆狭心症、☆心筋梗塞。脳:出血、高血圧性脳症、☆動脈血栓。眼底:網膜出血および滲出斑。乳頭浮腫の有無は問わない。血管:☆解離性動脈瘤、☆閉塞性動脈疾患。腎:☆腎不全。
 〔注〕☆印の事項は必ずしも高血圧の結果とは限らない。
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  表2 高血圧症の原因による分類
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1.本態性高血圧症
2.二次性高血圧
 A.腎性高血圧:1)腎実質性:@急性および慢性子宮体腎炎。A慢性腎盂腎炎。B多発性嚢胞腎。C水腎症。D糖尿病性腎症。E膠原病。F急性および慢性間質性腎炎。G外傷(腎周囲血腫)。2)腎血管性:@線維筋性異形成症。A大動脈炎症候群。B粥状硬化症。C外傷。
 B.内分泌性高血圧症:1)副腎性:@原発性アルドステロン症(副腎皮質腺腫、両側過形成)。A先天性副腎過形成。Bクッシング症候群(副腎腺腫、癌、過形成、異所性ACTH産生腫瘍)。C褐色細胞腫。2)その他:@甲状腺機能亢進症(最高血圧のみ上昇)、機能低下症。A末端肥大症
 C.神経性高血圧:@脳腫瘍脳炎脳血管障害、A急性ポルフィリア。B鉛中毒
 D.血流異常による高血圧:@大動脈シャント(動脈管開存など)。A大動脈閉鎖不全。B大動脈狭窄症。C大動脈炎症候群。D粥状硬化性収縮期高血圧
 E.外因性:薬物:@交感神経刺激薬。A経口避妊薬(ピル)。B副腎皮質ステロイド剤。Cグリチルリチン製剤、甘草。
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血圧の測定法
 @外来では坐位安静15分後に3回測定し、その平均を血圧値とする。
 A血圧測定と同時に脈拍数(心拍数)を測定する。
 B初診時には必ず左右の上肢の血圧を測定する。また左右の下肢の脈拍を触れ、左右差や下肢血圧の低下がうかがわれる場合は下肢の血圧の測定する。
 C立位(できれば臥位も)による血圧の変化をみる。
 D身体各部(頚部、胸部、背部、腹部)の血管雑音に注意する。
 E体型、皮膚所見、顔貌、腎不全の症状などに注意する。

臨床症状

 @高血圧そのものは自覚症状の原因とならないことが多い。
 A時に頭痛、肩こり、のぼせ等の症状が現れことがあるが、血圧の程度と症状の程度は相関しない。
 B高血圧に伴う症状のほとんどは高血圧性血管障害に基づく各臓器障害(脳血管障害、虚血精神疾患、腎硬化症など)が原因である。
 C二次性高血圧では、その原因疾患の症状がみられることがあり鑑別のきっかけになることが多い(表4)。
 a.血圧の左右差、下肢血圧の低下、間歇性跛行症あるいは鎖骨下動脈スチール症候群などは大動脈炎症候群、大動脈弓症候群、大動脈狭窄あるいは粥状硬化症などの動脈・大動脈の疾患の存在を示す。
 b.腹部血管雑音があれば腎血管性高血圧を疑う。
 c.四肢脱力や多尿などの低カリウム血症に伴う症状があれば原発性アルドステロン症(その他クッシング症候群、腎血管性高血圧症)の可能性を考える。
 d.発作性血圧上昇、あるいは頭痛動悸、発汗[これを3主徴という]、不安感、ふるえ、顔面蒼白、腹痛などを伴う発作などがあれば褐色細胞腫の可能性を考える。また褐色細胞腫では約70%の患者に起立性低血圧が認められることにも注意を要する。
 e.中心性肥満、満月様顔貌、多毛、皮膚線条等ではクッシング症候群(その他グルココルチコイドが過剰になる病態)を考える。

一般検査所見

  表3 高血圧スクリーニング検査
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 @検尿(一般定性試験、沈渣、細菌培養)。A血液学的検査(赤血球、ヘモグロビン、血色素、白血球数、白血球分画)。B血液生化学(総蛋白、アルブミン、BUN、クレアチニン、電解質、尿酸、総コレステロール、中性脂肪、血糖)。C心電図。D胸部X線、腹部X線。E眼底検査。
ヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲヲ
 F経静脈性腎盂造影。G超音波検査。H血症レニン活性、血症アルドステロン濃度。I血漿コルチゾール、尿中17OHCS,17KS。J血漿および尿中カテコールアミン
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高血圧のスクリーニング検査として@〜Eを施行し、二次性高血圧が疑われる場合さらに検査をすすめてF〜Jを行う。

  表4 二次性高血圧の鑑別
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二次性高血圧  |発見のきっかけとなる病歴、 |確定診断のための検査。
        |症状および検査所見。    |
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腎実質性高血圧 |腎炎、尿路感染の既往。高度蛋|腎クリアランス試験。フィッシュバ        |白尿、血尿、尿円柱、貧血、血|ーグ濃縮試験。経静脈性腎盂造影、        |清クレアチニン上昇。    |超音波検査、腹部CT、腎シンチグラ        |              |ム。腎生検。
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腎血管性高血圧 |若年者に発症した重症高血圧。|血漿レニン活性高値、血漿アルドス        |若年女性。腹部血管雑音。血清|ステロン濃度高値。経静脈性腎盂
        |クレアチニン上昇。血圧の上下|造影。胸部CT。分腎静脈レニン活性        |肢の差と左右差。脈拍減弱。 |(狭窄側/非狭窄側>1.5)。腎シ        |胸部X線で肋骨浸食像。   |ンチ。レノグラム。DSA、腎血管
        |              |造影、大動脈造影。
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原発性アルドステ|多尿、多飲。四肢脱力、周期性|血漿レニン活性抑制、血漿アルドスロン症     |四肢麻痺。低カリウム血症。 |テロン濃度高値。カプトプリル負荷        |              |試験(血症レニン活性の反応上昇み        |              |られない)。超音波検査、腹部CT。        |              |副腎静脈血アルドステロン濃度。
        |              |副腎静脈造影・副腎シンチ。
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褐色細胞腫   |発作性高血圧頭痛、発汗、動|血漿(尿)カテコールアミン高値。        |悸を伴う高血圧。顔面蒼白。高|腹部CT、超音波検査。副腎髄質シン        |血糖。尿中VMA高値。     |チ。レジチン試験、クロニジン試         |              |験(抑制試験)。
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クッシング症候群肥満、満月様顔貌。多毛、皮膚|尿中17OHCS,17KS高値。血漿コーチ        |線条。低カリウム血症。   |ゾル高値。デキサメサゾン試験。(        |              |抑制試験)。メトロピン試験(刺激        |              |試験)。腹部CT。副腎シンチ
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大動脈狭窄症  |若年者。下肢血圧の低下。胸背|胸部CT.DSA、大動脈造影。
        |部血管雑音。胸部X線にて肋骨|
        |浸食像。          |
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 @本態性高血圧症では臓器障害の合併がなければ検査所見に異常は見られない。
 A二次性高血圧を疑うきっかけとなる検査所見。表3に高血圧のスクリーニング検査を、表4に二次性高血圧の鑑別を示す。
 a.尿所見:1g/日以上の尿蛋白肉眼的血尿あるいは多数の円柱は腎疾患の存在を疑わせる。
 b.血液生化学:クレアチニン、尿素窒素の上昇は腎疾患の存在を示す。利尿剤を服用していないものに常にみられる低カリウム血症は原発性アルドステロン症を疑わせる。(但し原発性アルドステロン症の15%では常にカリウム値が正常であるといわれている)。高血糖(あるいは耐糖能異常)は、褐色細胞腫あるいはクッシング症候群でみられる(原発性アルドステロン症でもみられることがある)。
 c.心電図:T波の平低下、U波の出現などは低カリウム血症の存在を疑わせる。
 d.胸部X線および腹部X線:大動脈の形態の変化や石灰化を知る。また腹部X線では腎の形態もある程度知ることができる。
 e.経静脈性腎盂造影:i.形態的な異常より萎縮腎、慢性腎盂腎炎多発性嚢胞腎あるいは水腎症などの腎実質性疾患の診断、ii.左右のネフログラムの描画速度の違い、腎臓の大きさの左右差あるいは尿管の切痕は腎動脈狭窄を疑わせる(腎血管性高血圧を疑ったら初期のネフログラムの濃度差を検出するために急速連続撮影[静注後1,2,3,5,10,15,20分]にて撮影する)。
 f.腎超音波検査:腎の形態的な異常や副腎腫瘍の検出。
 g.血症レニン活性、血漿アルドステロン濃度:i.血漿レニン活性が常に抑制され、血漿アルドステロン濃度が高値なら原発性アルドステロン症を疑う。この場合、血漿レニン活性は種々の刺激(フロセミド、カプトプリル、起立など)にも反応しない。ii.血漿レニン活性と血漿アルドステロン濃度がともに高値ならば二次性アルドステロン(腎血管性高血圧症、悪性高血圧症、レニン産生腫瘍など)。iii.アルドステロン過剰の類似した病態(低カリウム血症、高血圧など)があるにも関わらず、両者ともに抑制されていたら偽性アルドステロン症[甘草、グリチルリチンなどの大量摂取](稀ではあるがLiddle症候群も)を疑う。
 h.血症コーチゾル、尿中17-0HCS,17-KS:高値ならばグルココルチコイド過剰による高血圧クッシング症候群)。i.異常高値ならば褐色細胞腫の疑い。
 B高血圧性臓器障害の評価のための検査(表1、表5)。患者の病態を把握し、治療法を決定するために重症度を決定する。表1にWHO分類による重症度分類、表5に東大第3内科高血圧症重症度分類を示す。
 a.胸部レ線。
 b.心電図。
 c.尿検査
 d.血液生化学。
 e.眼底検査。

次項へ続く( 2高血圧

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