概論
僧帽弁の閉鎖不全は、心室の収縮中に血液が左心室から左心房へ逆流する状態を招く。弁尖、弁輪、腱索、乳頭筋のいずれに異常があっても閉鎖不全を生じ得る。原因としてはリウマチ熱によるものが多いが、細菌性心内膜炎や僧帽弁逸脱によるものもみられる。
臨床症状
@胸部症状:僧帽弁閉鎖不全の初期には左心房圧は安静時にも労作中もあまり上昇しない。そのため僧帽弁狭窄と異なり、肺うっ血をきたすことなく何年も経過する。僧帽弁逆流が長期にわたると左心室機能が低下するとともに左心房圧・肺動脈圧が上昇し、労作時の動悸・息切れ・呼吸困難・起座呼吸などいわゆる左心不全の症状が現れる。またしばしば心房細動がみられる。
Aその他の症状:僧帽弁閉鎖不全において最も初期にみられる症状は労作性の疲労であることが多い。これは左心室が収縮しても、僧帽弁を通しての逆流があるため大動脈弁を通しての前方拍出量を維持できず、運動を行っている骨格筋への血流が不足することを反映している。病態が進行すれば左心不全から両心不全に至るため、浮腫や頚静脈の怒調もみられる。塞栓症は僧帽弁狭窄に比べ稀である。
B聴診所見:典型的な僧帽弁閉鎖不全ではT音は減弱し、心尖部に高調な全収縮期雑音を聴取する。腋下部から背部へ伝達することがある。U音は幅広く分裂し、肺高血圧があるとU音の肺動脈成分は増強する。また左室の拡張早期における急速な血液流入を反映し、強大なV音を生じるため、いわゆる奔馬調律を聴取する。V音に引き続き短い拡張期ランブルが聴かれる。
一般検査所見(表1)
@心電図:最も特徴的な所見は僧帽弁狭窄の場合と同様に左房負荷による僧帽性Pと心房細動である。逆流が長く続けば左室肥大の所見を示し、末期には右室肥大の所見も加わる。
A胸部X線:左室と左房の拡大が主な所見である。左房の拡大は、ときに著明になり巨大左房 (giant LA)と呼ばれる。拡大した左室と左房により心胸比(CTR)はときに80%以上にも及ぶことがある。
左心不全が進行すると肺血管陰影の増強やKerleyのB line等の所見がみられる。右室の拡大を示すこともあるが左室・左房拡大の所見と明確に区別することは困難である。
表1:僧房弁閉鎖不全の検査所見
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心電図:mitral P,心房細道、左室肥大、右室肥大。
胸部X線:左室拡大」、左房拡大(giant LA)、肺動脈陰影増強、肺うっ血、KerleyのB line。
心エコー:左室・左房径増大、腱索・乳頭筋断裂や僧帽弁逸脱など原因の推定。
心臓カテーテル検査:左房圧(または肺毛細管楔入圧)v波増高、左室造影による逆流の程度の評価、逆流分画の計算。
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特殊検査所見
@心エコー:左室径と左房径の増大がみられる。また腱索や乳頭筋の断裂、乳頭筋機能不全、僧帽弁逸脱といった僧帽弁閉鎖不全の原因を検索できる。ドップラー・エコー、カラードップラー・エコーを用いれば、逆流の程度を定量的に評価することが可能になる。 A心臓カテーテル検査:左房圧(または肺毛細管楔入圧)波形においてv波の増高が認められる。この所見は急性の僧帽弁閉鎖不全症において特に著明である。熱希釈法・左室造影それぞれによる一回拍出量を計測することにより逆流分画を計算することができる。
診断
本症も心雑音により発見されることが多いが無症状の時期は僧帽弁狭窄よりも一般に長い。心エコーによって診断は確定するが逆流の正確な定量的評価のためには心臓カテーテル検査が重要である。
管理上必要な検査(表2)
表2 僧帽弁閉鎖不全の管理上必要な検査
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程度の間隔で │タリス血中濃度測定(ジキタリス服用中の症例)。D血液凝固能
施行する検査 │(ワーファリン服用中の症例)。
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僧帽弁閉鎖不全の管理上必要な検査は僧帽弁狭窄の場合と同様であるが,突然死が起こりやすいことも考慮して手術時期を適切に判定することが重要である.
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