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リウマチ熱

 芹澤 剛

概論

 リウマチ熱はA群streptococcusによる上気道感染に続発する結合組織の病変であって、心臓の膠原線維が特に障害されやすく、重症の場合は広範な心筋炎をおこして死亡するほか、心臓の弁を線維化させてリウマチ性弁膜症を発症せしめる。
 先進国では、一般の衛生状態の改善と、抗生物質が安易に使用されるようになったため、リウマチ熱およびリウマチ性心疾患の発症頻度は激減していて、我が国でも学童におけるリウマチ性心疾患の罹患率は、1958年の4.6/1000より1981年には0.14/1000と著しく低下している。

臨床症状および主要検査所見

 @大症状
 a.心筋炎(70%に出現、carditis):以下の症状をもって心筋炎と診断する。
 心雑音リウマチ熱、リウマチ性心疾患の既往のない者に新たに出現した著名な心尖部収縮期雑音(僧帽弁閉鎖不全)・心尖部拡張中期雑音(Carey-Coombs)、または心基部拡張期雑音大動脈弁閉鎖不全)。既往歴のある者に出現した、新たな雑音、またはすでに存在した雑音の明らかな性状の変化。心雑音は心筋炎を発症した75%の例で発症1週以内に出現する。
 心拡大:左室・左房の拡張を心エコー図、胸部X-P、理学的所見より評価する。リウマチ性心筋炎の50%以上に認める。
 心膜炎:心膜摩擦音、心嚢水、心電図、心エコー図より診断する。5〜10%の頻度で出現する。
 うっ血性心不全:5〜10%の頻度で出現する。
 b.多発性関節炎(54%に出現、polyarthritis):移動性の関節炎で膝・踵・肘・手関 節など複数以上の大関節に腫脹・圧痛・疼痛・運動制限などの症状が出現する。 
 c.舞踏病(10%に出現、chorea.:しばしば筋力低下・行動異常を伴った速い無目的な不随意運動が出現する。舞踏病は他の症状が消失してから出現することがおおいので、ハンチントン舞踏病、SLE、ウイルソン病、薬物中毒などによる不随意運動と鑑別する必要がある。   
 d.有縁性紅班(17%に出現、erythema marginutum):ピンク色の皮疹で中心部は白色で、辺縁は丘状または匐行疹となっている。大きさは種々で躯幹、四肢の近位に出現し、顔面や四肢の遠位部には出ない。
 紅班は一過性かつ移動性で皮膚を温めると明らかになる。非膿性・非硬性で圧迫すればピンク色が消失して白くなる。
 e.皮下結節(3%に出現、subcutaneous nodules):固い無痛性の皮下結節が、肘・膝・手関節などの伸展側や後頭部・胸椎の棘突起に沿って出現する。結節の上の皮膚は可動性で炎症所見は認めない。皮下結節の出現は稀であるが、出現する場合は心筋炎を伴うことが多い。
 A小症状
臨床症状:
 a.リウマチ熱または、リウマチ性心疾患の明らかな既往歴
 b.関節痛:一関節以上の疼痛で、炎症・圧痛・関節の運動制限など客観的な所見を伴わない。
 c.発熱:通常発病の初期に39℃を越える発熱をみる。
検査所見
 a.血沈の亢進、CRP陽性、白血球数増多。
 b.心電図異常:P-R間隔の延長。
 B他の臨床症状
 腹痛・頻拍・全身倦怠感貧血・鼻出血・前胸部痛などの症状が出現するが、これらは他疾患でもみられるので、リウマチ熱に特異な症状ではない。

他の検査所見

 上述した炎症反応・心電図所見は診断基準に含まれるが、他に以下の所見が、先行するstreptococcus感染症を支持するものとして用いられる。
 @抗streptococcus抗体
 a.抗streptolysin O(ASLO):最も汎用されている検査で、成人250倍、5歳以上の小児で333倍以上は陽性と判定するが、リウマチ熱以外でも上昇する。また、リウマチ熱患者の20%では、発症2か月以内でも正常値のことがあり、この傾向は臨床症状がchoreaのみの場合に強くみられる。 
 b. 抗deoxyribonuclease B(anti-DNA ase B)
 c. 抗hyaluronidase
 d. 抗streptozyme(ASTZ)test
 a,b,cが抗体の検出に有効である。dは感受性が高く、陰性の場合は、streptoccus感染症を否定できる。
 AA群streptococcusの分離
 咽頭培養陽性:咽頭感染はリウマチ熱に先行するので、培養時すでに菌が存在しないことが多い。また小児では健常児でも上気道にA群streptococcusが存在することがあるので、培養の結果よりも抗体検査の方が有用である。  

診断

 A群streptococcus感染の既往が明らかなもので、次の条件を満たすものを急性リウマチ熱と診断する。
 1. 大症状2
 2. 大症状1と小症状2

管理上必要な検査(表2、表3)

 リウマチ熱は再発する頻度の高い疾患で、特に心病変を有する小児では非常に高い。そのため必ず予防的に長期間ペニシリン療法を続けるとともに、感染の徴候がみえたら積極的に培養、炎症反応、抗streptococcus抗体の検査を行い、早期に十分な治療を行う。
 また弁膜疾患に罹患するとリウマチ熱の再発がなくとも弁病変が進行して、不整脈、心不全の症状が出現してくるので、定期的に心機能を検査し、内科的治療に限界がみえたら速やかに外科的治療を行う必要がある。

  表1 診断基準(Jones criteria,rivised)
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    大症状  |           小症状           
−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 心筋炎    │ 発熱                      
 多発性関節炎 │ 関節痛                     
 舞踏痛    │ リウマチ熱またはリウマチ性疾患の既往      
 有縁性紅斑  │ 血沈の亢進またはCRP陽性             
 皮下結節   │ P-R間隔の延長(心電図)             
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 先行するA群streptococcus感染の証拠:最近の猩紅熱罹患。咽頭培養にてA群streptococcus菌を証明。ASLOの上昇または他の抗streptococcus抗体陽性。

  表2 リウマチ熱に関する検査
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6ヶ月毎又は感染時  | @血沈 ACRP BWBC CASLO(ASO)
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 上気道感染時   | @咽頭培養                 
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  表3 リウマチ性心疾患に関する検査

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6か月毎(安定している)   │ @EKG A胸部X-P B心エコー
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2〜3か月毎(進行している) | @EKG A胸部X-P B心エコー C心臓カテーテル
              |(最終的には)   
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 メディカル・ノート
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 リウマチ熱再発の防止
 @ 120万単位 ペニシリンG 筋注 月1回
 A 20万〜25万単位 ペニシリンV 経口 1日1回
 B 500mg エリスロマイシン 経口 1日2回
 再発防止が重要であり、一般にペニシリン経口投与を行う。原則として成人に達するまで継続し、成人でも感染の危険が高い環境にあるものは継続する。
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