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慢性関節リウマチ

 木佐木 友成

概論

 慢性関節リウマチ(RA)は全身の関節を中心とする慢性炎症性疾患で自己免疫現象が病態に深く関与している。男女比は1:4で女性に多く、年齢は20〜60歳に発症することが多い。

臨床症状

 @慢性に経過する多発関節炎:羅患関節の自発痛・運動痛・圧痛・腫脹、関節可動域の制限。手足の関節(DIP関節はまれ)、肩・肘・膝・股関節、顎関節・頚椎環軸関節などほとんど全身の関節が侵され得る。左右対称性が特徴。
 A朝のこわばり:朝起床時など長時間の安静休息後に関節のこわばりがみられる。
 B全身倦怠感・微熱・筋肉痛。
 C皮下結節:約20%程の例で見られ、圧力を受けやすい部分の皮下に多い。

一般検査所見(表1)
 @炎症の存在を反映する検査所見:血沈値上昇,CRP陽性、白血数増加、α1、α2グロブリンの増加、血清補体の上昇がある。慢性に経過している場合、血清鉄低下、小球性貧血、γ-グロブリンの増加が見られる。
 A免疫学的異常としてリウマトイド因子と呼ばれる,IgGのFc部分に対する自己抗体が検出される。通常のRAテスト、ワーラーローズ反応,RAHAテストなどはIgMに属するリウマトイド因子活性を反映している。

  表1 慢性関節リウマチ検査所見
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    尿  |通常正常。蛋白尿および顕微鏡的血尿:金、ペニシラミンによ
       |る腎障害、アミロイドーシス併発の可能性に注意      
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    血算 |(1)小球性貧血(ヘモグロビン↓,MCV↓,MCH↓)     
       | 慢性炎症状態による鉄非利用性の貧血          
       |(2)白血球数 正常であることも多い。          
       | 白血球数増加:炎症が強いとき・悪性関節リウマチ   
       | 白血球数減少:シェーグレン症候群フェルティ症候群  
       | 治療薬剤による影響(ステロイド→増加、各種薬剤→減少)
       | あり、要注意                     
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  血液生化学|(1)血漿蛋白 慢性炎症型、すなわちA/G↓、α1、α2グロ  
       | リン↑、γーグロブリン↑、フィブリノーゲン↑,ZTT,  
       | TTT↑のことが多い。                 
       |(2)肝胆道系酵素(GOT,GPT,LDH,ALP,γーGTPなど)正常   
       |(3)腎機能(BUN,creatinine)正常            
       |(4)血清脂質 通常正常                 
       |(5)尿酸   通常正常                 
       |(6)血清Cu↑、血清Fe↓,UIBC↓             
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 血沈(血沈)| 亢進                         
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 血清学的検査|(1)CRP陽性                       
       |(2)ASO,ASK正常                     
       |(3)RAテスト、ワーラーローズ反応,RAHA陽性で高力価   
       | 陽性率は80%、悪性関節リウマチではローズとRAHAが陽性
       |(4)免疫グロブリンIgG,IgA,IgM)ときに増加       
       |(5)補体(CH5,C3,C4)正常、炎症が強いとき上昇、悪性関
       | 節リウマチでは低下                 
       |(6)梅毒血清反応陰性                  
       |(7)抗核抗体通常陰性、ときに陽性(20%以下)       
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   骨・  |軟部組織の腫脹、関節裂隙の狭小化、骨粗鬆症、骨びらん、関
 関節X線像 |節の強直・亜脱臼、環軸関節X線側面像で、頭部前屈時に環椎
       |が歯突起より2.5mm以上前方に離れていると前方亜脱臼   
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 胸部X線像 |通常所見なし                      
       |(1)胸腹炎・胸水、(2)両下肺野を中心とする線状網状影   
       |(3)肺野に結核陰影多発(カプラン症候群)        
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特殊検査所見

 @関節液:性状黄色微濁、ムチン塊が脆弱、粘稠度の低下、白血球増加(ときに、≧ 5,00/mm3),補体価の低下,RA細胞陽性、細菌・結核菌の培養陰性。
 A胸水:細菌・結核菌の培養は陰性。補体価低下.LDH高値、糖低下(≦25mg/dl)。
 B膝関節滑膜生検・皮下結節の生検病理像:滑膜細胞の増生・細胞浸潤。結節は中心部壊死を伴う肉芽組織像。
 C関節シンチグラフィー:罹患関節部への99mTcリン酸の集積。

診断

 @旧来アメリカリウマチ協会(ARA)の診断基準によりclassical,definit,probable,possibleの診断が成されていた(表2).現在1987年改訂された新診断基準が用いられている(表3).
 A罹患関節の臨床的所見・関節X線像よりstage分類が成される(表4).
 B日常生活動作の評価により,機能障害度によるclass分類が行われる(表5).

  表2 慢性関節リウマチ診断基準(ARA基準)
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A.定型的慢性関節リウマチ Classical Rheumatoid Arthritis
 この診断には,次の7項目を満たすことが必要である.項目1から項目5までは,関節症状が少なくとも6週間続かねばならばならない.除外項目の1項目でも該当する患者は,これらの範疇から除く.
1.朝のこわばり.
2.少なくとも1関節以上での運動痛,あるいは圧痛(医師により確認されたもの).
3.少なくとも1関節以上での腫張(軟組織の肥厚あるいは液貯留があって,骨化形成のみ によるものは含まない.医師により確認されたもの).
4.腫張(医師により確認されたもの)が少なくとも,もう一つの他の関節にも認められる (双方の罹患の間に無症状の期間があっても,3カ月を越えてはならない).
5.身体の両側の同じ関節が,同時に侵される対称性関節腫張(医師により確認されたもの )が認められる(近位指節関節,中手指節関節,中手趾節関節の両側性罹患は完全に対 称性でなくても良い).遠位指節関節罹患はこの基準を満足しない.
6.骨突起部,伸側表面,あるいは関節近傍の皮下結節(医師により確認されたもの).
7.慢性関節リウマチの定型的X線像(これには少なくとも,罹患関節に限局,あるいは近 接して最も強い脱灰像を含まねばならず,単なる変性像のみではない).変性像があっ ても,慢性関節リウマチ患者を除外するものではない.
8.凝集反応陽性−2施設の研究機関で,正常人の陽性率が5%を越えない方法による.”リ ウマトイド因子”の証明.あるいはレンサ球菌凝集反応の陽性(これは現在,実施され ることはない).
9.滑液ムチン沈降物の減少(細片状の混濁液).(結晶成分のない,白血球数2,000/mm3,又はそれ以上の炎症性滑液貯留を,この基準に代用させ得る).
10.次の項目の3つ以上を満足する定型的な滑膜病理組織像.すなわち著明な絨毛増殖,しばしば柵状となる滑膜表面細胞の増殖.”リンパ結節様”になりがちな慢性炎症細胞の著明な浸潤(主としてリンパ球又はプラズマ細胞),滑膜表面あるいは間質へのフィブリンの沈着,壊死巣.
11.皮下結節の定型的病理組織像.中心部に細胞壊死のある肉芽巣で,周囲は増殖した柵状の単核細胞と末梢部の線維化及び慢性炎症性浸潤で囲まれている.

B.確実な慢性関節リウマチ Definite Rheumayoid Arthritis
 この診断には前記Aの基準項目の5項目を満たす必要がある.基準1から項目5までは,関節症状が少なくとも6週間続かねばならばならない.

C.慢性関節リウマチと考えられるもの Probable Rheumatoid Arthritis
 この診断には前記Aの基準項目の3項目を満たす必要がある.基準1から項目5までは,関節症状が少なくとも6週間続かねばならばならない.

D.慢性関節リウマチを除外し得ぬもの  Possible Rheumatoid Arthritis
次の基準項目の2項目を満たし,関節症状の維持期間が少なくとも3カ月以上のものをこの様に診断する.
1.朝のこわばり.
2.関節の圧痛あるいは運動痛(医師により確認されたもの).が反復したか,又は3週間 以上継続したか,いずれかの既往を有すること.
3.関節腫張の確認又は現認.
4.皮下結節(医師により確認されたもの)
5.赤沈降心あるいはCRP陽性.
6.虹彩炎(若年性関節リウマチ以外では,基準項目としての価値が疑わしい).

E.除外項目 Exclusions
1.全身性エリテマトーデスの定型的皮疹(蝶型分布,毛根栓塞及び萎縮部分を伴う).
2.多数のLE細胞(2時間を越えぬ時間処理したヘパリン血から作成した塗沫標本2枚につき4 個以上)(あるいは全身性エリテマトーデスの他の明らかな証拠).
3.結節性動脈周囲炎の組織像,動脈の文節状の壊死で,血管周囲に広がり,多数の好酸球 を含む傾向のある結節状の白血球浸潤を伴う.
4.頚部,躯幹,咽頭筋の筋力低下,あるいは持続する筋肉あるいは持続する筋肉腫張,あ るいは皮膚筋炎
5.確実な強皮症(指に限局したものではない)(後者は議論のある点である).
6.移動性の関節障害と心内膜炎,特に皮下結節や輪状紅斑,あるいは舞踏病を伴う定型リ ウマチ熱の臨床像(抗ストレプトリジン価の高値があっても,これだけでは慢性関節リ ウマチを除外し得ない).
7.一つあるいは,それ以上の関節に腫張,発赤及び疼痛の急性発作を伴う痛風性関節炎の 特有な臨床像.もしコルヒチンで緩解するか,尿酸結晶を伴えば,特に特徴的である.8.痛風関節.
9.細菌あるいはウィルスによる感染性関節炎の臨床像.急性感染巣あるいは既知の感染に 密接に関連していること−悪寒,発熱,及び通常はじめは移動性の急性関節障害(特に 関節内に病原体を見いだすか,あるいは抗生剤に反応すれば確実である).
10.関節内の結核菌,あるいは関節結核の組織学的証明.
11.ライター症候群の定型的臨床像.通常は初期には移動性を示す急性関節障害に伴う尿 道炎と結膜炎.
12.肩手症候群の定型的臨床像.萎縮と拘縮を起こしやすい.び慢性の手の腫張を伴う肩 と手の片側性障害.
13.肥大性関節症に特徴的な臨床像.バチ状指および(または)長管骨の骨軸に沿った肥厚 性骨膜炎が,特に肺内病変(あるいは他のしかるべき基礎疾患)のあるときにみられる .
14.神経病性関節症に特有な臨床像.神経学的変換を伴って骨の変化と破壊とを罹患関節 に見る.
15.尿中のホモゲンチジン酸,尿をアルカリ性にすることによって肉眼的に観察し得る.
16.サルコイドの組織学的証明.あるいはKveimテスト陽性.
17.多発性骨髄腫,骨髄中のプラス細胞の著明な増加.あるいは尿中Bence-Jones蛋白の 証明.
18.結節性紅斑に特徴的な皮疹.
19.白血病あるいはリンパ腫.末梢血,骨髄,あるいは組織中に特徴的細胞を見る.
20.無ガンマグロブリン血症.
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  表3 慢性関節リウマチ新診断基準(ARA,1987年改定)
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@少なくとも1時間以上持続する朝のこわばり.
A3個以上の関節の腫張.
B手(wrist),中手指関節(MCP),近位指関節(PIM)の腫張.
C対称性関節腫張.
D手・指のX線変化.
E皮下結節.
Fリウマトイド因子陽性.
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@〜Cは6週間以上持続.
以上7項目中4項目を満たすものをRAとする.

  表4 慢性関節リウマチの病期の分類(Steinbrocker分類)
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Stage T 初期
*1.X線写真上に骨破壊像はない.
 2.X線学的オステオポローゼはあっても良い.
Stage U 中等期
*1.X線学的に軽度の軟骨下骨の破壊を伴う.あるいは伴わないオステオポローゼがある.軽度の軟骨破壊はあっても良い.
*2.関節運動は制限されても良いが,関節変形はない.
 3.関節周辺の筋萎縮がある.
 4.結節及び腱鞘炎のごとき関節外軟組織の病変はあっても良い.
Stage V 高度
*1.オステオポローゼの他にX線学的に軟骨及び骨の破壊がある.
*2.亜脱臼,尺側変位,あるいは過伸展のような関節変形がある.線維性あるいは骨性強  直を伴わない.
 3.強度の筋萎縮がある.
 4.結節及び腱鞘炎のような関節外軟組織の病変はあっても良い.
Stage W 末期
*1.線維性あるいは骨性強直がある.
 2.それ以外はStageVの基準を満たす.
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*印のある基準項目は,特にその病気あるいは進行度に患者を分類するためには必ずなければならない項目である.

  表5 慢性関節リウマチの機能障害度分類(steinbrocker分類)
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 ClassT 身体機能は完全で不自由なしに普通の仕事は全部できる.
 ClassU 動作の際に,1カ所あるいはそれ以上の関節に苦痛があったり,又は運動制限はあっても,普通の生活なら何とかできる程度の機能.
 ClassV 普通の仕事とか自分の身の回りのことがごくわずかできるか,あるいはほとんどできない程度の機能.
 ClassW 寝たきり,あるいは車椅子に座ったきりで,身の回りのこともほとんど,又は,全くできない程度の機能.
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管理上必要な検査

 RAの管理は長期にわたるため,治療効果に判定には定期的な臨床所見及び検査所見の把握が必要である.治療の副作用のチェックのための検査も含めて表6に示す.

  表6 慢性関節リウマチの管理上必要な検査
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@RA活動性の評価
 a.臨床的チェック(受診時)
  罹患関節の圧痛・腫張・可動域
  朝のこわばりの持続時間
  握力
 b.検査
  血沈,CRP,RAテスト・RAHAまたはワーラーローズ反応(2〜6Wに1回)
  赤血球数・へミグロビン・ヘマトクリット・白血球数(2〜6Wに1回)
  骨関節X線(6〜12カ月に1回)
A治療の副作用のチェック
 a.金製剤・ペニシラミン
  検尿・腎機能・肝機能
  胸部X線(ゴールド肺は注射総量300mg〜1000mgでの発症が多い)
 b.ステロイド又は非ステロイド性消炎剤の長期使用
  胃内視鏡(1年に1度)による慢性の幽門前庭部潰瘍のチェック.
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メディカル・ノート
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慢性関節リウマチの亜型及びこれと合併する疾患
 @悪性関節リウマチ血管炎・内臓病変を伴い,発熱・全身衰弱の症状が見られる.臓器病変としては,皮膚潰瘍,上強膜炎,心嚢炎,間質性肺炎,神経炎などがあり,白血球数は増加,補体価は低下し,抗核抗体は陽性化することがある.
 Aシェーグレン症候群:乾燥性角結膜炎と口内乾燥症を特徴とし,単独の疾患として発症することもあるが,RAなどの膠原病と合併することも多い.RAの10〜20%に合併が見られる.
 Bフェルティ症候群:RA+白血球減少+脾腫.他に皮膚色素沈着・リンパ節腫張・血小板減少・血管炎の症状を伴う.
 Cアミロイドーシス:RAの炎症活動性が長期に続いた場合に見られ,蛋白尿で発見されることが多い.腎生検・直腸生検などによってアミロイドの沈着を証明.
 Dカプラン症候群:RA+塵肺症+多発性の肺リウマトイド結節.
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