概論
多発性筋炎(Polymositis,PM)および皮膚筋炎(Dermatomyosits, DM)は筋組織の炎症と萎縮を主徴とする。男女比は1:2程度で、初発年齢は20〜40歳を中心に分布するが、学齢期の小児発症もまれではない。罹患臓器が筋肉にほぼ限定されるものを多発性筋炎、これに特徴的な皮膚症状を伴うものを皮膚筋炎と呼ぶが、両者は本質的には同一疾患と考えられる。膠原病と異なり、罹患臓器が限定されているのが特徴的である。病因には自己免疫異常の関与が考えられ、臨床的には悪性腫瘍の高頻度の合併に注意を要する。
臨床症状
@筋症状:左右対称性の四肢近位筋の筋力低下が先行することが多く、進行すると、頚筋、咽頭筋、喉頭筋、顔面筋の筋力低下を生ずる。患者は起立動作や背臥位での頭部挙上の困難を自覚し、やがて上肢挙上や歩行の困難、嚥下困難を自覚する。症状は徐々に進展するが、比較的急速な進展をみることもある。筋痛や筋萎縮を認める場合もある。
A皮膚症状:眼瞼(とくに上眼瞼)のすみれ色の浮腫性皮疹は特徴的でヘリオトープheliotope疹と呼ばれる。またこれ以外にも、顔面、胸部四肢(特に手指)の関節伸側に紅班を生ずる。これらは慢性化すると、萎縮性皮膚変化に至る。
Bその他の症状:レイノー症状や多発性関節痛の存在はまれではないが、その程度は軽い。また、本疾患には悪性腫瘍の合併頻度が高く、これに由来する症状に留意する必要がある。
一般検査所見(表1)
@血清CPK値の上昇はほぼ必発。またGOT,GPT,LDH、アルドラーゼ、ミオグロビンが上昇する。
A尿中へのクレアチン排泄の増加とミオグロビン尿をみる。
B血沈値亢進、CRP陽性化、リウマトイド因子陽性化を多く認めるが、一般検査所見の異常はまれ。
表1 多発性筋炎・皮膚筋炎の検査所見
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
血液および尿 |@血沈値亢進とCRP陽性化。
|ACPK,GOP,LDH,アルドラーゼ、ミオグロビン上昇。
|Bリウマトイド因子陽性化とJo-1抗体陽性化。
|C尿中クレアチン排泄量増加とミオグロビン尿。
−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
特殊検査 |@筋電図上、myogenic pattern。
|A筋上検上、特徴的な病理組織所見。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
特殊検査所見(表1)
@筋電図上、筋原性変化myogenikc pattrenを認める。
A筋生検は診断を確定する上で、大きな情報を得られる。完全な萎縮に至っていない筋を選らべば、筋線維の萎縮、変性や壊死、リンパ球を主体とする細胞浸潤、間質の線維化などの特徴的所見が得られる。
診断
@筋力低下、CPKなどの筋原生酵素の上昇、筋電図所見、筋生検所見から、比較的容易に診断が可能。皮膚症状の存在しないものを多発性筋炎と診断する。
Aこれらの所見に、特徴的な皮膚症状が合併してる場合には、皮膚筋炎と診断する。
B進行性筋ジストロフィー、リウマチ性多発性筋痛、その他の膠原病との鑑別を要する。
管理上必要な検査(表2)
治療の過程では、血沈値、CPR値などから炎症の程度を把握するとともに、筋原性酵素の変動に常に留意する。また悪性腫瘍の合併頻度が高いことから、これに関する検査も随時必要となる。
表2 多発性筋炎・皮膚筋炎の管理上必要な検査
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
最小限1カ月間隔 |@血沈、A血算、B生化学検査(特にCPKなどの筋原性酵素)、
で施行する検査 |C血清学的検査(特にCRP)、D尿検査特にクレアチン定量)
−−−−−−−−+−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
3〜6カ月程度の |@胸部X線撮影
間隔で施行する検|A上部消化器X線検査と内視鏡検査
査 |B血中腫瘍マーカー(AFP,CEA,CA19-9など)
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
メディカル・ノート
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
多発性筋炎・皮膚筋炎と悪性腫瘍
悪性腫瘍を合併する症例はステロイド剤や免疫制御剤に対する反応に乏しい傾向がある。そして腫瘍の摘出により本疾患の改善が得られることも多い。これらから、悪性腫瘍が自己免疫機序を介して、本疾患を修飾している可能性が示唆される。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
[本文書の利用につきましては、目次に明記した注意事項に従って下さい]