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脳血管障害

 飯島 節

概論

 @脳血管障害とは脳の血管の器質的もしくは機能的異常により神経症状をもたらす病態の総称である。脳梗塞は虚血による脳組織の壊死(軟化)で、脳動脈の粥状硬化による脳血栓症と頭蓋外からの塞栓子による脳塞栓症とがある。出血には脳実質内への脳出血とくも膜か腔へのくも膜下出血がある。神経症状が発症後24時間以内に消失するものを一過性脳虚血発作(TIA)と呼ぶ。
 A脳血管障害は突発的に発症することが多いことから脳卒中(stroke,apoplexy)とも呼ばれる。
 B脳血管障害は昭和26年以来約30年間にわたり日本人の死亡原因の首位を占めていたが、近年は悪性新生物、心疾患に次いで第3位となっている。
 C脳血管障害の罹患率と死亡率はともに加齢とともに増加する。同年齢では女性よりも男性に多い。
 D最高血圧、最低血圧とともに高い者ほど罹患率・死亡率が高い。
 E脳塞栓症の塞栓源として弁膜疾患を伴わない心房細動が重要視されるようになってきている。
 Fくも膜下出血は脳動脈瘤および動静脈奇形の破錠による。他の病型より発症年齢が低い。

 臨床症状
 @発症・進行様式:a脳血栓症:数時間ないし数日かかって階段状(stepwise)に進行する。安静時や睡眠中の発症が多い。TIAが前駆することがある。 b脳塞栓症:突発的に発病し数分以内に神経症状が完成する。c脳出血:日中活動時に多い。意識障害が数時間でスムーズに進行する。トイレで倒れているところを発見される例が多い。dくも膜下出血:激烈な頭痛で突発する。軽度の頭痛が前駆することがある。(alarm headache)。
 A意識障害:a脳梗塞では意識障害の程度は病巣の部位と大きさに左右され一定しない。一般に脳血栓症では意識障害はないかあっても軽く、脳塞栓症ではより高度のことが多い。b脳出血では意識障害が急速に進行することが多いがCTの普及により意識障害をまったく伴わない小出血が発見される機会が増加している。cくも膜下出血では発症時に一過性に意識障害をきたすことが多い。
 B眼球の位置と運動麻痺:一般にテント上病変では病巣をにらむ共同偏視と反対側の片麻痺を、テント下病変では病巣の反対側を向く共同偏視と交代性麻痺を呈する。
 C血圧:発症時、脳出血ではほとんど常に高血圧を呈するが他の病型では一定しない。 D頭痛くも膜下出血では激烈な頭痛が必発であり、脳出血でも多い。脳梗塞で頭痛をきたす場合は後頭蓋窩の病変に多く、他ではまれ。
 E悪心・嘔吐脳出血くも膜下出血に多い。脳梗塞では椎骨脳底動脈系の病変で回転性眩暈を伴う場合に認める。
 F項部硬直:くも膜下出血では最も重要な所見だが、発症直後には認められないこともある。

一般検査所見(表1)

 @非脳卒中の除外、合併症の有無と全身状態と把握を目的とする。
 A脳卒中急性期には脱水、一過性の耐糖能異常、白血球増多、蛋白尿、心電図異常などをみることがある。             

  表1 脳血管障害急性期のスクリーニング検査
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1)検尿(糖、ケトン体、蛋白、沈渣)。
2)血算(RBC,Hb,Ht,WBC,Plt,WBC分画)。
3)血液生化学(glucose,BUN,creatinine,Na,K,Cl,GOT,GPT,NH3)
4)動脈血ガス分析
5)心電図
6)胸部単純X線撮影
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特殊検査所見(表2)

 @ X線CTは症状の軽重にかかわらず緊急に実施する。新鮮な梗塞巣、脳幹部の病巣、吸収期の出血巣などは検出できないことがある。
 A MRIは X線 CTscanの前記の欠点を補い得るが検査に長時間を要するので、全例に実施する必要はない。
 B PET と SPECT により血流や代謝についての情報を得る。必須ではない。
 C脳血管撮影は、 くも膜下出血では必須。経静脈 digital subtraction angiographyは安全性が高いが画像はやや劣る。
 D 脳波は意識障害の客観的評価、代謝性脳症やToddの麻痺との鑑別などに有用。
 E髄液検査くも膜下出血や脳脊髄膜炎の疑われる時には必ず実施する。髄液採取は脳ヘルニアを誘発したり出血を促進したりする危険があるので、 CTを先に実施しそれで診断がつけば行わない。

  表2 特殊検査所見
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X線CT    |梗塞巣、浮腫、陳旧性出血巣は低吸収域として、新鮮な血腫は、高吸
       |収域として描出される。脳溝、脳槽、脳室などの変形、圧排、偏位か
       |らmass effectを推定する。
MRI      |梗塞巣はT2強調画像にて高信号域として描出される血腫の描出様式は
       |病期により異なる。新鮮な梗塞巣脳幹の病巣,lacune、浮腫などの検
       |出に優れる。
RET,SPECT   |局所脳血流量(rCBF)、脳酸素消費量(CMRO2)などの脳循環代謝諸量の
       |異常は、X線CTで示される病巣よりも広範に及び、高次脳機能障害な
       |どの病態をよりよく反映することが多い。           
脳血管撮影  |脳血管の狭窄、閉塞、硬化、動脈瘤、動静脈奇形などCTでは得られな
       |い所見を得る。
脳波     |病巣に一致する局所的な徐波、意識障害を反映する全般的な徐波、
       |痙攣を示す棘波など。
聴性脳幹反応 |脳幹部の病巣に対応する波の消失または潜時の遅延くも膜下出血では
髄液     |ピンク色、脳出血や出血性梗塞でも血性
眼科的検査  |眼底検査(くも膜下出血では網膜前出血をみることあり。乳頭浮腫
       |血管の動脈硬化性変化、高血圧性変化などの有無をみる。)
       |視野検査、複像検査。
耳鼻科的検査 | 平衡機能検査、眼振計。
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次項へ続く( 2脳血管障害

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