概論
大脳皮質下神経核が主として侵され不随意運動、筋トーヌス異常、姿勢異常などの症状を呈すすいたい外路系障害のうち、症候性にパーキンソニズムを呈する疾患は、変性疾患以外にも多い(表1)。その他にchorea、athetosis、ballism、dystoniaなど不随意運動を主とする疾患がある。
表1 パーキンソニズムをきたす主な疾患
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変性疾患 | その他
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1)パーキンソン病 |1)脳炎後パーキンソニズム
2)線条体黒質変性症 |2)脳血管障害性パーキンソニズム
3)Shy-Drager症候群 |3)薬物性パーキンソニズム
4)進行性核上性麻痺 |4)ウィルソン病
5)Hallervorden-Spatz病 |5)脳外科的疾患
6)その他(若年性パーキンソニズム|6)その他(神経梅毒、Creutzfeldt-Jakob)
、オリーブ橋小脳萎縮の一部、固縮|
型Huntington病) |
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臨床症状
@安静時振戦:4〜7Hzの丸薬を丸めているようなリズミカルな交互運動で、随意運動中は軽減ないし消失。睡眠時には認められない。
A固縮:関節を他動的に動かした場合の抵抗の増加で、鉛の管を曲げるような鉛管現象、ガクガクとした断続的な抵抗の歯車現象が認められる。下肢では鉛管現象が多い。
B無動:動作の開始や切り替えが緩慢。自発運動の減少、歩行時の上肢の振りなど連合協調運動の消失、手の巧緻運動拙劣。
C姿勢反応障害:姿勢が崩されたときの立ち直り反応が悪い。押された方向に突進する。
一般検査所見
@血液、生化学など一般検査場特異的異常なし。
A髄液ホモバミリン酸低下-パーキンソニズムを呈する疾患。
B有棘赤血球出現、CPK上昇。-chorea-acanthocytosis.
特殊検査所見
CT:パーキンソン病-正常例多い。線状体黒質変性症、Shy-Drager症候群-橋および小脳萎縮。Huntington病、良性遺伝性舞踊病、choreaacanthocytosis-尾状核萎縮。ジストニアを主とする疾患-正常例多い。
診断
@安静時振戦、固縮、無動、姿勢反応障害のうち二つあれば、パーキンソニズムと診断し、次に病因の鑑別診断を行う。
Aパーキンソン病の診断は、発症年齢、初発症状、(4〜7Hzの安静時振戦)、前期臨床症状の項目中@〜Cの4大症候を認めれば、確実である。
Bパーキンソニズムと紛らわしい症状として、a)動作緩慢とGegenhalten(前頭葉障害による)、b)小刻み歩行(両側錐体路障害による)、c)振戦(本態性振戦による)。
C付随意運動を主とする疾患群では、遺伝形成、痴呆の有無、CT所見により診断する。
A.パーキンソニズムを主とする疾患
1) パーキンソン病:
@黒質緻密層ドーパミンニューロンの変性のため、ドーパミンの生産が著しく減少し、淡蒼球、視床の機能障害が起こる。病変部位にLewy小体の出現が認められる。有病率は人口10万につき40〜50人。男女比は1:0.7で、発症年齢は50〜70歳が多い。
A初発は一側上肢の振戦が多い。経過につれて同側下肢、さらに両側に及ぶ。4大症候(安静時振戦、固縮、無動、姿勢反応障害)以上に前屈姿勢、側彎、すくみ足、小刻み歩行、仮面様顔貌、瞬目減少、高音障害(小声、声音単調)、書字障害、自律神経症状(脂顔、多汗、流涎、起立性低血圧、四肢循環障害、便秘、排尿異常)抑うつ症状など。
2) 線条体黒質変性症:
@発症年齢は40〜70歳。典型的なパーキンソニズムを認める。臨床所見のみではパーキソン病との鑑別がむずかしい。
A錐体路徴候、仮性球麻痺、小脳症状、舞踏病アテトーシス運動、または ジストニーを伴うこともある。振戦に比し固縮が強い。高音障害著明な傾向あり。起立性低血圧、排尿障害。
BLドーバ無効。
3) Shy-Drager症候群:
@神経原性起立性低血圧と失神発作が特徴。寡動、無動、固縮、安静時および動作振戦。排尿障害、小脳性失調。
Aその他筋線維束攣縮、筋萎縮など多系統にわたる症状を示す。
4) 進行性核上性麻痺:
@初老期に発症。寡動、固縮あり、振戦はまれ。核上性眼球運動障害(病初期には上下方向の注視麻痺、後にはすべての方向で障害される。“人形の眼現象”が認められる)頚の背屈。
A軽度の痴呆、仮性球麻痺、錐体路微候、精神障害が認められ、2〜3年内に死亡する。 BL-ドーパは無効。
5) Hallervorden‐Spatz病:
@10歳前後の発症、常染色体劣性遺伝。
A錐体外路系の筋硬直、不随意運動(パーキンソン様の振戦、アテトーゼ、ジストニー)痙縮、知能低下、30歳以前に死亡する。
6) 脳炎後パーキンソンニズム:
@ECONOMO流行性脳炎、日本脳炎などの罹患後、数か月〜数10年、後遺症として現れる。
Aパーキンソン病に比し自律神経症状強い。筋硬直、寡動が強く振戦少ない。逆Argyll-Robertson微候、注視麻痺発作、ジストニー性運動障害、同語反復。
7) 脳血管障害性パーキンソニズム:
@散在性の多発性小軟化巣により起こる。脳血管発作により段階的進展がみられる場合がある。
A仮性球麻痺、振戦、筋硬直、寡動、錐体路徴候、失語、感情失禁。ときに小脳症状もある。多少とも巣症状を呈し、髄液、脳波、CTに異常を認める。
B抗コリン薬、L-ドーパなどで著明な効果は期待できない。
8) 薬物性パーキンソニズム:
@レセルピン、メチルドーパ、フェノサイアジン系、ブチロフェノン系、ロウウォルフィアアルカロイド、ベンザマイド系の一部。主としてメジャートランキライザーにみられる。
A中枢性制吐剤メトクロプラミド(プリンペラン)、スルピドなど。
Bパーキンソニズム以外に、アカシジア、口部ジスキネジー、急性ジストニア反応(投与後1〜3日以内に出現し、顔面、頭頚部の筋緊張亢進)。
C使用量・期間のチェックが必要。薬剤の使用中止により症状が改善することが多い。
9) ウィルソン病(肝レンズ核変性症):
@常染色体劣性遺伝。若年発症。出生10万人について1.9〜6.8人。血清セルロプラスミンの減少を伴う銅代謝障害。
A肝への銅沈着のため肝障害、肝硬変へと進行。振戦・小脳症状・企図振戦・精神症状・知能低下。角膜にKayser-Fleischer輪を認める。
B血清セルロプラスミン(<20mg/dl)、銅(<80μg/dl)の低値、尿中銅排泄の増加(>100μg/日)、生検肝での銅沈着。CT上大脳萎縮、脳室拡大、レンズ核の低吸収域を認める。
10) 脳外科的疾患:
@脳腫瘍、慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、頭部外傷(慢性頭部外傷としてボクサーパーキンソニズム)。
B.不随意運動を主とする疾患
1) Huntington病:
@舞踏病様運動(肩すくめ、顔しかめ、体幹四肢の不髄意筋収縮)と精神症状(人格変化、記憶力低下、注意散漫、痴呆など)を主徴とする常染色体優性遺伝の疾患。有病率人口10万について2〜7人。発症年齢は30〜80歳。A進行性。
2) 淡蒼球ルイ体萎縮症:
舞踏病様運動、ballismを主徴とするまれな家族性疾患。
3) Chorea-acanthocytosis症候群:
@舞踏病様運動、自咬症、末梢神経障害。常染色体劣性遺伝。若年発症。痴呆は生じない。
ACPK上昇、末梢血有棘赤血球出現。β-Lipoprotein正常。
4) 良性遺伝性舞踏病:
@幼少時期発症。常染色体優性遺伝。
A舞踏病様運動。痴呆は生じない。
5) 老人性舞踏病:高齢者。孤発性。舞踏病様運動。痴呆は軽度。非進行性。
6) 変形性筋ジストニー:
@常染色体優性遺伝、劣性遺伝、孤発例あり。
A5〜15歳に発症。企図振戦。四肢、体幹の異常肢位。緩徐な不随意運動は随意運動、精神的因子により増強され、睡眠中消失。末期には捻転痙攣となる。
7) 痙性斜頚:発病20〜50歳。男女同頻度。一側に頭部が捻転するような不随意運動。睡眠中消失。
8) Meige症候群:
@顔面の緩徐な不随意運動。中年以後の発症。
Afacial dytoniaとも呼ばれる。
9) Gille de la Tourette症候群:
@慢性多発性チック。小児期発症。
A運動性チック―眼、顔面、頭、肩に始まり体幹、四肢へ。言語性チック。
管理上必要な検査
@治療の過程では重症度や残存機能の把握を行う。
A抗パーキンソン剤のうち特にLドーパによる副作用に留意する。消化器症状―胃透視、内視鏡。循環器症状(不整脈、狭心痛、起立性低血圧)―血圧、心電図、心エコー。精神症状(抑うつ、焦燥幻覚、妄想、錯乱)。血液、生化学、(肝機能検査、尿酸、CPK)。その他wearring-off現象、on-off現象、すくみ現象、薬効そのものの減弱。
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