概論
1981年6月ロサンゼルス在住の若い男性同性愛者の間にカリニ肺炎が多発,ついで7月にカリフォルニアでも同様の患者の報告があったことから,1982年CDCによりacquired immunodeficiency syndrome(AIDS)として一つの疾患として認められた。その後,1983年から1984にかけてフランスのMontagnierや,アメリカのGallo,Lery,らにより原因ウイルスが発見されHumman immunodeficiency virs (HIV)と命名,HIVによるウイルス性疾患であることが明らかになった。このHIVは,レトロウイルス科の亜科のレンチウイルスに属するRNAウイルスであり,1985年には全塩基配列も同定された。以後,世界のAIDSの発生状況は爆発的に増加しており,1987年9月30日付けのWHOの報告では,世界124か国60,653人のAIDS患者が報告されている。WHOによるこれらの疫学調査により明らかにされてきたことから,この疾患はアメリカでは同性愛者や,麻薬常用者の病気であったが,アフリカでは男女差がなく,STDとして蔓延していることがわかった。特に,中央アフリカの一部の都市では,一般人の数%,売春婦の80%までがHIVーcarrierであるといわれており,1987年現在有効な治療薬やワクチンが開発されていない現状から,今後特にアフリカにおけるAIDS発生率の上昇が危惧される。
臨床症状
@初期症状:HIV感染後HIV抗体陽性化までの間に,一過性にインフルエンザ様症状のみられることがある。
A無症候性キャリヤー(AC)およびARC:ACの間は,軽度のリンパ節腫脹程度でほとんど臨床的には無症状であるが,ARCに進展すると全身性リンパ節腫脹,発熱,倦怠感,10%以上の体重減少,下痢,寝汗,精神不安,貧血,などの一般症状に加え,口腔内ガンジダ症,帯状疱疹,毛様白斑症,軽度の中枢神経症状などの付随疾患を併発する。
BAIDS:ARCの時にみられた一般症状に,日和見感染や,腫瘍に伴う症状,神経症状,などがみられる(表1)。
表1 AIDSの臨床症状
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日和見感染
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ウイルス |サイトメガロ(網膜,肺,食道,腸などの全身臓器),単純ヘルペス
|(粘膜潰瘍),帯状疱疹,EB(リンパ腫)など
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細菌 |非定型抗酸菌,結核菌,サルモネラ,赤痢菌(下痢症)
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原虫 |カリニ(肺炎),トキソプラズマ(脳炎),クリプトスポリジウム
|(腸炎),赤痢アメーバ(腸炎)
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真菌 |カンジダ(食道,気管支),クリプトコッカス(肺炎,髄膜炎),
|アスペルギルス(肺炎)
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腫瘍
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カポジ肉腫 |顔面,四肢の皮膚,口腔内粘膜,リンパ腺や腸管,肺,心,肝,
|など諸臓器
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リンパ腫 |原発性中枢神経リンパ腫
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神経症状(腫瘍によるものを除く)
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HIV |進行性AIDS痴呆症候群,亜急性脳炎,ミエロパチー,無菌性髄膜炎,
|末梢神経炎
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日和見感染 |トキソプラズマ脳炎,クリプトコッカス髄膜炎,進行性多病巣性
による |白質脳炎
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一般検査所見(表2)
白血球減少(顆粒球減少,リンパ球減少),赤血球減少,血小板減少,血沈値の亢進,蛋白尿などが見られる。
表2 AIDSの検査所見
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血液 | 白血球減少(顆粒球減少,リンパ球減少),赤血球減少,血小板減少
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血清 | 免疫グロブリン(IgG,IgA)の上昇,免疫複合体の増加,β2ーMGの増加
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|C細胞性免疫の低下。
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特殊検査所見(表2)
@抗HIV抗体陽性:HIV感染の診断には,不可欠な検査である。検査法としては,PA法,EIA法,Western-Biot法などがあるが詳細は検査方法の項に譲る。
Aリンパ球(特にT4リンパ球)の減少,OKT4/OKT8比の減少:HIV感染のstageをfollow-upするときのmarkarとして有用である。
B遅延型皮内反応の陰性化,NK cell活性の低下:病状の進行に伴い細胞性免疫の異常が見られるようになる。
C免疫グロブリン(IgG、IgA)の上昇、免疫複合体の増加:高γグロブリン血症を伴う多クローン性B細胞活性化がみられる。
Dβ2-MG、α-1サイモシンの増加: 血清学的な異常についても報告されている。
診断
@ 問診: 血液製剤受注者については、新たな感染者が発生する可能性は少なく、今後は日本においても、STDとして広がる恐れがある。HIV流行地へ渡航中の感染機会の有無、ホモセクシュアルの有無、麻薬使用歴などについての問診を行っておく。
A 血清診断: PA法、EIA法などのスクリーニング検査を行い陰性であった場合は、2カ月後にもう一度HIV抗体検査を行う。陽性であった場合には確認試験を行いこの結果をみて判定する。
B 病型分類の決定: HIV抗体が確認されれば臨床症状や、免疫能の状態から、表3に示すCDC分類に照らし合わせ病状を把握する。
表3 HIV感染stage(CDC分類)
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GroupT | 急性感染
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GroupU | 無症候性感染
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GroupV | 持続性全身性リンパ腫症
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GroupW‐A | 非特異的全身症状
B | 神経症状
C | 二次感染
D | 二次腫瘍
E | その他の発症
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管理上必要な検査
他の感染を併発することにより病状の進行する可能性もありAACやARCの段階から適切な監視下におく必要がある。また、アジドチミジンを処方する場合には、定期的に副作用のチェックを行う必要もあり、これらを含めて表4に示す。
表4 管理上必要な検査
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1) HIV stageの評価
a.臨床的チェック
日和見感染の有無、発熱、下痢などの症状の有無、ツ反
b.検査
血算、T4リンパ球数、T4/T8比、肝機能、免疫グロブリン、
β‐2ミクログロブリン
c.特殊検査
Western‐Blot法による抗体パターン。HIV抗原、ウイルス分離
2) 経過観察時のチェック
血算(アジドチミジン使用中は2週間に1回)、
T4リンパ球数、T4/T8比、肝機能、Western‐Blot、HIV抗原、
ウイルス分離(1か月に1回)
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付記: AIDSに関する情報や、研究の発展は目覚ましく、今回の内容については、1987年12月現在までに発表されたり、公表された文献などをまとめたものである。
メディカル・ノート
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1986年Montagnierらのグループにより、西アフリカのAIDS患者からHIV-Uが発見された。HIV-T(今まで述べてきたHIVのこと)のスクリーニング検査では陰性になることも考えられ、今後の詳しい調査が待たれる。
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