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白血球・白血球像

 秋山淑子
概論
 血球の母細胞である全能性造血幹細胞は骨髄中で細胞分裂と分化を繰り返し多能性幹細胞を経て赤血球系,顆粒球系,巨核球系の幹細胞となり,さらに種々の成熟段階を経て正常末梢血中に好中球,好酸球,好塩基球の三種の顆粒球と単球として出現する。リンパ球は全能性造血幹細胞からリンパ系幹細胞を経てリンパ球となる。血球の産生と形態の特徴を図1に示した。白血球は細胞の種類によって機能を異にし,単球や好中球は血管に付着し,血管の間を通って組織に至るまでに微生物に遭遇するとこれを貪食し,殺菌,消化する機能を発揮して生体の防御にあたる。リンパ球は抗体やいわゆるリンホカインを産生し感染防御反応や炎症反応に携わる。好酸球には寄生虫に対する破壊作用と即時型アレルギー反応(T型反応)への関与がある。好塩基球は抗凝固作用を有し即時型アレルギー反応に関与する。

図1 血球の成熟過程と血球の特徴
図2 血球サイズによる白血球ヒストグラム

血球の成熟過程と血球の特徴(2)を改変)


血球サイズによる白血球ヒストグラム


測定法と正常値
 @白血球数:
 a)自動測定法:凝固阻止した血液を血球計数器にかけると溶血剤によって赤血球は溶血し白血球と血小板が残る。コールター・カウンターでは35〜450fl(μm3)の範囲の粒子を白血球と設定し測定する。したがって血小板の凝集塊があると白血球として算定されることがある。
 b)用手法:白血球用メランジュールを用い血液をTurk液で10倍に希釈し計算盤の0.1μlの区画(赤血球数の項参照)を4箇所(W1-W4)数え,その数を平均して100倍すると1μl中の白血球数が得られる。
 A白血球像:塗抹標本を顕微鏡下で観察する方法が行われているが,最近では自動白血球分類装置による方法も広く用いられるようになっている。
 a)鏡検による方法:新鮮な血液をスライドガラスに薄く塗抹する。速やかに乾燥させライト,ギムザなどの染色液で染色する。初めに全体を弱拡大で鏡検し細胞の染まり具合や白血球数の多寡,赤血球の形態,血小板の数や形態などを観察する。ついで強拡大にして細胞が一層になった部位を選び,白血球100〜200個を観察し,白血球をその特徴に従って分類し百分率を求める。百分率から各血球の絶対値を求めることもできる。
 b)自動測定法:この方法には1)パターン認識による分類,2)酵素反応による分類,3)血球サイズによる分類の三種がある。1)は塗抹標本を作成し,分類装置の顕微鏡下にセットする。装置は作動させると自動的にスタートポイントを探し任意の細胞数を分類する。ヘマトラックには細胞の大きさ,核形,染色性,顆粒などの特徴が数値化され,これを記録させたコンピュータが内蔵されている。測定時,装置が認識した細胞の特徴をさきに記憶させた情報と照合させ画像処理によって細胞の同定を行うB細胞鑑別には標本の乾燥と染色が影響し,一定の条件下で作成した標本の細胞以外はunclassとして細胞同定は行われないので,オペレーターが直接観察して該当する細胞の種類を入力する。この方法でも芽球をリンパ球などに読み込むことはない。2)は浮遊液中で細胞酵素反応を応用しペルオキシダーゼとアルシアンブルー染色を行い,同時に細胞の大きさも認識して鑑別する方法である。分類法としては例えばペルオキシターゼ弱陽性の大型および中型を好中球と大型リンパ球,ペルオキシターゼ陰性の幼若顆粒球や単球系細胞などをLUCというなど,従来の分類法と異なった表現法をとること,バックアップ用に別途標本の作成が必要なことが問題として残されている。3)は血球計数器が白血球を算定するとき,各血球のサイズによるヒストグラムを作成することによって分類するもので図2に示すように左から35-90flの範囲をリンパ球,90-160flを単球,160-450flを好中球とし各分画の比率と絶対数が得られる。3分類のため好酸球や好塩基球がいずれかに数え込まれること,サイズのみで分類するため赤芽球をリンパ球と算定するなど問題はあるが白血球数と同時に描かれる利点がある。

図2 血球サイズによる白血球ヒストグラム

正常値1)

白血球数    4000〜9000/μ
白血球像
  好中球    2500〜7500/μ(36〜71%)
  好酸数     40〜 400/μ(<11%)
  好塩基球    10〜 100/μ(<1.5%)
  リンパ球   1500〜3500/μ(20〜50%)
  単球      200〜 800/μ(<10%)

異常値の意味

  表1 好中球の異常の原因と疾患(小峰の顆粒球の疾患により)2)
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A. 減少:
 @感染症:細菌:腸チフス,パラチフス,栗粒結核,その他の重症感染症,ウイルス:麻疹風疹水痘,インフルエンザ,肝炎,伝染性単核細胞症,リケッチア:発疹チフス,原虫:マラリア,カラアザール。
 A血液疾患:白血病,多発性骨髄腫悪性リンパ腫,マクログロブリン血症,骨髄線維症再生不良性貧血
 B癌の骨髄転移。
 C薬剤:抗腫瘍剤。
 D脾機能亢進症。
 E好中球減少症:遺伝性,家族性,先天性,特発性。
 F免疫機序。

B. 増加:
 @感染:特に球菌,桿菌による感染症
 A組織損傷:心筋梗塞肺梗塞,骨折,熱傷,外科手術。
 B非感染症の炎症:リウマチ熱,リウマチ様関節炎,結節性多発性動脈炎,血管炎,腎炎,甲状腺炎。
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 白血球数は種々の疾患で増減するが,増多する疾患として,各種炎症性疾患や薬物などにより反応性に増加する場合と,白血病など腫瘍性に増殖する場合がある。減少をきたすものとして,感染症,抗癌剤などの薬物,再生不良性貧血などの血液疾患,脾機能亢進症,自己免疫性疾患があげられる。白血球数が正常でも分画が異常の場合がある。
 好中球数の異常はさきに述べた白血球数の異常とほぼ同じと考えられ,好中球7500/μ決ネ上を増加症という。減少症とは好中球1500/μ決ネ下をいい,減少の程度が高度あるいはまったくみられない場合を特に無顆粒球症と呼ぶ。また好中球には機能異常による疾患もあり,走化性の異常,走化性因子生成障害,貧食不全,殺菌不全などがあり感染症を病態とするものが多い。なかでもChediak-Higashi症候群,慢性肉芽腫症,G6PD欠乏症,myeloperox-idase欠損症などが有名である。好中球の増加および減少の原因を表1にまとめた。
 単球は800/μ戟C10%以上を増加症といい,結核や悪急性細菌性心内膜炎などの感染症,膠原病,血液疾患などでみられる。
 好酸球400/μ戟C5%以上の増加はアレルギー疾患,寄生虫疾患,急性感染症の回復期,乾癬,疱疹状皮膚炎などの皮膚疾患,肺性好酸球増多症,結節性多発動脈炎などの諸疾患でみられる。好酸球数の減少は急性炎症やストレス,副腎皮質ステロイド服用によって起こる。
 50/μ決ネ上の好塩基球の増加は慢性骨髄性白血病真性多血症のような骨髄増殖性疾患にみられることが多く,まれに粘液水腫,痘瘡水痘にみられる。
 リンパ球の増加する疾患として反応性の場合と腫瘍性に増加する場合がある。反応性に増加する疾患には感染による場合や免疫学的機構によるものが多い。悪性腫瘍として急性および慢性リンパ性白血病,白血性リンパ肉腫,原発性マクログロブリン血症などがある。リンパ球減少症は絶対数1500/μ決ネ下の場合を指し,反応性リンパ球減少症は炎症,悪性腫瘍などでみられ,先天性免疫不全,ホジキン病尿毒症,副腎皮質ステロイドや細胞傷害性薬物使用などの諸疾患が含まれる。

メディカル・ノート
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 塗抹標本による観察のみでは細胞の鑑別は困難で,酵素学的検索や電顕による検索,モノクローナル抗体による分類などが併せて行われている。近年種々のモノクロナール抗体の開発とフローサイトメトリーの普及により免疫機能的方法で細胞を分類できるようになった。フローサイトメトリーがもつ緑色蛍光と赤色蛍光を,モノクローナル抗体をつけた細胞にあてると,細胞特性に応じて発生する散乱光と標識蛍光色素由来の蛍光が検出でき細胞の鑑別が可能となる。現段階では血液細胞特にリンパ球系の細胞鑑別にもっとも有用とされているが,さらに開発が進めばその他の細胞の鑑別に利用できると期待されている。
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 1)小宮悦造編:日本人の正常血液像,南山堂,1962年.
 2)小峰光博:顆粒球の疾患,血液病学(三輪史朗)2巻 第一版,849〜887,1981年,文光堂,東京.

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