概論
補体は体液中に存在する一群の蛋白質で、主として免疫、炎症反応に関与している(図1)。
@肝細胞、マクロファージ等の網内系より産生。
A抗原抗体反応・免疫複合体により活性化される経路(classical pathway)。
B細菌多糖体などにより、P、B、Dといった蛋白を巻き込んでC3が活性化される別経路(alternative pathway)。
CC5以下の成分の活性化により形成される膜攻撃複合体による溶血・溶菌作用。
D活性化により生じる分解産物が生物学的活性を持つ。例えば
白血球遊走能:C3a、C5a、C567
アナフィラキシー作用:C3a、C5a
Eこれらの反応を制御する系をもつC1インヒビター(C1-INH)やI(C3bインアクチベー ター)、反応のコファクターとしてのH、CR1など。
補体型蛋白とその活性化機構
測定法と正常値
活性を測る方法と蛋白量そのものを測る方法がある。前者には、補体系全体として溶血活性をみるCH50の他、途中まで反応させたintermediate cellを用いたり、補体欠損血清を用いて特定の補体成分の活性を測定する方法がある。後者には対応する抗血清を用いて一元免疫拡散法(SRID)を行い蛋白濃度を測定するものがあり、他にレーザーネフェロメトリー、RIA、EIAなどの方法もある。
測定上の注意
@採血後試験管内で日に日に活性が低下していくので、血清分離後は−70℃で保存する。
ACH50の正常域は30〜45単位/mlであるが、測定条件その他で変化することもあるので、標準血清の使用による補正、経時的変化で追うなどの点を考慮に入れる。
B補体のcold activationという現象がある。これは試験内で低温に放置しておくとC1、C4、C2といったclassical pathwayが活性化され、CH50が低下してしまう現象である。EDTAを用いたり、NaCl添加によるイオン強度上昇によりこの現象は阻止される。補体のcold activationは慢性肝疾患でよくみられる。この状態の診断には
a)通常のCH50が低下、C4活性低下
b)37℃分離新鮮血清のCH50は正常域またはAADTAまたはNaClを添加して保存した検体を用い、CH50が正常域
正常値
CH50: 30〜45U/ml
20U/ml以下は低下
10U/ml以下は著明な低下
50U/ml以上は高値
C3: SRIDあるいはレーザーネフェロメトリー
65〜140mg/dl
C4: 同上
12〜40mg/dl
表1 補体系検査値の異常
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A.補体低下 (CH50)
1. C4低下、 C3低下
1)SLE活動期 −
2)血清病 |
急性糸球体腎炎 − 著名な低下
遺伝性血管神経性浮腫発作時 −
重症筋無力症
溶血性貧血
遺伝性血管神経性浮腫非発作時
DIC
悪性関節リウマチ・血管炎
クリオグロブリン血症
劇症肝炎
慢性肝炎・肝硬変
補体のcoid activation
2.C4正常、C3低下
膜性増殖性糸球体腎炎(C3NeFによるalternative pathwayの活性化)
エンドトキシンショック
クリオグロブリン血症(IgA型)
3.先天性補体成分欠損症
CH50低下の他、対応する補体成分の活性、蛋白量の低下を認める。
B. 補体高値
1)急性・慢性感染症
2)悪性腫瘍・リンパ腫
3)慢性関節リウマチその他炎症反応の強いリウマチ性疾患
ベーチェット病
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異常値の意味(表1)
低値
@遺伝的に各蛋白成分が欠損している場合(C1〜C9)、各補体欠損症制御蛋白の欠損による補体系消費亢進による場合(C1-INH欠損:遺伝性血管神経性浮腫 HANE、C3b-インアクチベーター欠損)、これらの場合CH50はほとんど検出されないが、C9欠損では正常の1/3程度の活性は見られる。
A産生低下:肝疾患で見られる。なお肝疾患では前述のcold activationも起こる可能性があることに注意。また、SLEにおける補体低値に産生低下が関与している。
Bclassical pathwayの活性化:抗原抗体反応がC1を活性化することより始まる。C3、C4ともに低下する。SLE、血清病が代表的疾患である。SLEの場合C4の低下は鋭敏でCH50軽度低値、C4低値、C3正常の状態が、低補体血症の前駆状態であったり、治療により低補体血症が改善する場合もC3より回復が遅いことがある。
また、RAの関節液、胸水でも補体活性の低下がみられ、局所での免疫反応が起こっていると示唆される。
Calternative pathwayの活性化:エンドトキシンなどによる補体の活性化がある。また膜性増殖性糸球体腎炎の場合、C3NeF(C3nephritic factor)というIgGが存在し、これがC3b-Bbという活性型蛋白複合体と結合して、これが不活化する制御系を働かなくしてしまうのでC3の消費が起こる。
高値
大部分は強い炎症活動性の亢進による産生亢進である。蛋白量で1.5倍〜3倍上昇する。CRP、α1-アンチトリプシン、フィブリノーゲンなどのいわゆる急性反応蛋白と相関する。
メディカル・ノート
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現在一般に利用できる補体系検査はCH50、C3、C4であるが他に以下の成分について解説しておく。
1)C1-INH:C1のセリンエスラーゼ活性を阻害する蛋白。遺伝性血管神経性浮腫はこの成分の欠損による。CH50は発作時に著明な低下を示す。非発作時は軽度低下、C4の低下がみられることが多い。一元免疫拡散法でC1-INH低下を証明する。
2)C3a、C5a:C3やC5が活性化されて生ずる生物学的活性を持った分解産物。radioimmunoassayで測定される。アナフィラキシー活性を持つので、炎症局所や全身的アナフィラキシー反応の分析で検出を試みることがある。
3)ACH50:alternative pathwayによる溶血活性の測定。ウサギ赤血球をEGTA存在下でCa2+をキレートして非検血清で溶血させて測る。
4)C3c、C3d(C3dg):いずれもC3の分解産物で、免疫電気泳動、対応する抗血清を用いたSRIDやEIAなどで検出され、C3の活性化を示唆する。
5)CR1:C3bと結合するレセプターで、ヒト赤血球、顆粒球、B-リンパ球、マクロファージ、腎足細胞の膜上に存在する。免疫付着現象の担い手であり、ヒト赤血球上のCR1は補体結合型免疫複合体の結合運搬処理に関与していると考えられている。IAHA法、抗CR1抗体を用いたRIAなどにより解析がなされ、SLE患者赤血球上CR1の減少が報告されている。
なお、C3に関連した膜上レセプターには、他にCR2、CR3、CR4の報告がある。
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